相模鉄道が朝の列車を「あえて」減らしたワケ 本数や車両数削減で何が変わる?
翌2007年度も輸送力はこのままで、混雑率は145%に上昇する。相模鉄道もこの状態は良くないと考えたのか、2008年度には久々に輸送力を増強した。1時間あたりの本数は28本と変わらないものの、10両編成の列車の本数を20本から21本へと1本増やし、いっぽうで8両編成の列車の本数を8本から7本へと1本減らした。1時間当たりの車両数は2006・2007両年度の264両に対し、2008年度は266両と2両増えている。だが、通過人員も増加した結果、残念ながら混雑率は146%とさらに悪化してしまった。
2009年度になって、相模鉄道は2003年度以来4度目となる輸送力の引き下げを実施し、1時間あたりの列車本数は28本から27本へと削減された。このうち21本は10両編成で、残る6本が8両編成だ。ただし、通過人員も減っていたので混雑率は141%に緩和された。通過人員の減少は翌年度以降も続き、2011年度の混雑率は137%となった。
輸送力を下げた理由はなにか
相模鉄道はなぜ混雑率を上げてまで輸送力を下げたのであろうか。同社に聞いたところ、通過人員が減り、混雑率が下がったからであるという。
現実に混雑率は上がったではないかと文句を言いたくもなるものの、相模鉄道をはじめ鉄道事業者側にも言い分はある。国土交通省が混雑率を算定する際に用いる基準と、鉄道事業者が車両を設計する際に従うJIS(JISE7103「鉄道車両-旅客車-車体設計通則」)とでは車両の定員の算定方法が異なり、前者のほうがやや少なく算出されるのだ。
細かな定義の紹介は省くとして、相模鉄道の代表的な通勤電車であり、なおかつ同社で最大級の輸送力をもつ10000系電車の場合、10両編成の定員は国土交通省の基準で算定すると1472人となるいっぽう、JISの基準では1562人、8両編成の定員は前者で1172人、後者で1244人となる。
仮に朝のラッシュ時の全列車にこの10000系電車が用いられていたとすると、2011年度の輸送力は国土交通省の基準で3万7944人、JISの基準で4万266人だ。4万9466人という通過人員は変わらないとすると、混雑率は前者が130%、後者が123%となって印象はずいぶん異なってしまう。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら