深夜営業の自粛要請にコンビニ業界が猛反発

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 コンビニの急成長を支えてきた24時間営業に、逆風が吹いている。複数の自治体で、深夜営業の自粛を求める声が上がっているのだ。

埼玉県は今年度内の制定を目指す「地球温暖化対策推進条例」に、深夜営業の自粛要請を盛り込む方針だ。「コンビニは深夜化するライフスタイルの象徴。深夜営業の自粛を機に、人々の意識転換も図りたい」と、温暖化対策専門委員会の須藤隆一座長は説明する。電力消費のみならず、深夜に若者がたむろするなど、コンビニを取り巻く環境は悩みの種だ。深夜も需要のある店舗を除き、駅前や住宅街を中心に自粛を求めるという。

京都市も7月に開催する「市民会議」で営業自粛の具体的な内容を固める。埼玉と同様、ライフスタイルの改善が主な目的だ。政府が公募する「環境モデル都市」にも名乗りを上げており、温室効果ガス削減に取り組んでいる。洞爺湖サミットに向け、アピールする狙いもあるようだ。

売上高は2割減と試算

これに対し、コンビニ各社が加盟する日本フランチャイズチェーン協会(JFA)は猛反発する。「今後も24時間営業を継続したい」(土方清会長)。身の危険を感じた女性による“駆け込み”が年間1万3000件もあり、災害支援や夜間の雇用創出など、社会インフラとして地域貢献に取り組んでいると主張する。

仮に7~23時に営業時間を短縮しても、昼間の配送負担が増加することでCO2削減効果は4%程度にとどまると試算する。一方で、売上高は約2割も減少し、デメリットのほうが大きいと訴える。

とはいえ、各チェーンに目を向けると、足並みはバラバラだ。セブン−イレブン・ジャパンは「24時間という利便性が薄れてしまう。営業時間の短縮以外で、環境対策に取り組みたい」(山口俊郎社長)。一方、ローソンは3年前から検討しており、「地域ごとに24時間営業が必要かどうか議論を進めるべき」(新浪剛史社長)と柔軟な姿勢だ。

今後、自粛要請があっても、JFAは営業時間の短縮以外の対応策を検討する方針。全国4万2000店とオーバーストア状態の中、各社は生き残りにしのぎを削る。加盟店の収益にも影響するため、自治体による法規制も難しそうだ。深夜営業の妥協点を探すのは容易でない。

(田邉佳介 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済)

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