「金をコツコツ買う」は、どうして有効なのか すでに金価格は底入れ、ジワジワと上昇へ

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とはいえ、いまの金価格はかなり割安に放置されていると見たいところだ。これは、米国株や日本株は割高なのと正反対の位置づけにあるといえるだろう。どの角度から見るかによって見方も変わるが、少なくとも価格面から見て、相当の収益機会があるように感じられる。

特に、筆者がドル円の見通しを立てる際に利用する実質金利でみて、金価格はきわめて割安な水準に放置されている。一般的には名目金利に注目する向きが多いが、筆者は常に実質的な金利で考えるようにしている。そうすれば、インフレ考慮後の実質的な価値がつかめるからである。

ちなみに、ドル円については本欄で解説してきたように、日米実質金利差から118円が天井になるとしてきたが、ようやく下落した。まだ割高だが、方向性としては円高であろう。少なくとも、118円のピークから調整するとの見方が正しかったことが、この1週間ほどで証明されたことになる。

金価格はジワリと「もう一段の上昇」へ

このように、実質金利でみると、名目金利では見えないものが見えてくる。名目金利だけ見ていると、今回のドル円のピークと反落は読めなかったであろう。

ちなみに、同様の手法で金価格の理論値を計算すると、1400ドル程度という理論値が導き出される。この5年間の金価格と米実質金利の動きを比べると、実質金利に先行性がある。その実質金利が示す、金価格の理論値が1400ドルなのである。このように考えると、現在の市場環境が変わらなければ、金価格はもう一段、上昇に向かうことになりそうだ。

金投資をしている読者ならわかるが、昨年末の金価格の下落局面では、多くの投資家が金投資をいったんやめた。世界最大の金上場投資信託であるSPDRゴールド・トラストからも大量の金が流出した。株高を理由に安全資産である金を手放したくなったのだろうが、上述のアノマリーを知っていれば、わざわざ安値を売りに行くことはなかったはずである。

もっとも、金を購入した後は、よほどのことがない限り、手放さないのが原則である。金融資産が増えるにつれて、その分だけ金も買い増すのがよい。そうすれば、資産全体に占める金の割合を落とすこともなく、安心して投資判断に向かうことができる。

ポートフォリオでは、金はあくまで心理的な負担を軽減してくれる、ヘッジ的な扱いである。そして、大量保有や短期トレードを目的としないことが肝要である。短期トレードも否定はしないが、ポートフォリオ運用の観点からは、やはり長期的な見方をするほうがよいだろう。長期的には、金には「多くの援軍」が存在する。この点については、また日を改めて解説したい。

江守 哲 コモディティ・ストラテジスト

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えもり てつ / Tetsu Emori

1990年慶應義塾大学商学部卒業後、住友商事入社。2000年に三井物産フューチャーズ移籍、「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」としてコモディティ市場分析および投資戦略の立案を行う。2007年にアストマックスのチーフファンドマネージャーに就任。2015年に「エモリキャピタルマネジメント」を設立。会員制オンラインサロン「EMORI CLUB」と共に市場分析や投資戦略情報の発信を行っている。2020年に「エフプロ」の監修者に就任。主な著書に「金を買え 米国株バブル経済の終わりの始まり」(2020年プレジデント社)。

 

 

 

 

 

 

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