現代の「おカネの流れ」を歪める意外な黒幕

タックスヘイブンと大英帝国の深い関係

イギリスの海外領は第二次世界大戦後も、税制をそのままにしておいた。せっかく籍を置いてくれている多国籍企業に出て行かれないようにするためである。さらに1960年代ごろからイギリスの海外領は、スイス銀行と同様の「秘密主義」も採り入れている。まとめると、イギリスの海外領の施策は、

・税金を安くする
・会社の登記などが簡単にできるようにする
・金融の秘密を守る

ということである。つまり、このときに「タックスヘイブン」が出来上がったのである。

ではなぜ、イギリス本島ではなく、イギリス勢力圏の島々にタックスヘイブンが作られたのか?

イギリス本島では、さすがに税金を安くすることはできないし、金融に対する規制や監視などにも、先進国として責任を持たなければならない。しかし、世界に点在するイギリス領の島々であれば、ありていに言えば「その責任は持たなくていい」。イギリス側は、他国から抗議があっても、「自治領なので、われわれの責任外だ」という言い訳ができるからである。

こうしたイギリスの動きに、他国も追随するようにタックスヘイブンを作り、世界に広まっていったが、そのなかでも最も毒を持ち、最もおカネを集めていたのはイギリスの海外領だったのだ。

マネーゲームの総本山は大英帝国にある

現代において、世界はマネーゲームの弊害にしばしば悩まされている。

ITバブルの崩壊や、リーマンショックなどで、幾度もわけのわからない不況に見舞われ、ヘッジファンドの無茶な買収劇によって関係企業や従業員は右往左往させられる。

このマネーゲームの総本山といえば、ニューヨークのウォール街を真っ先に思い浮かべるかもしれない。確かにウォール街は、金融取引量自体は世界一である。だが、ウォール街の場合、その大半は国内の取引である。アメリカという市場がそれだけ大きいということだ。

では、マネーゲームの本当の総本山はどこか。実は、ロンドンのシティなのである。

世界金融全体のシェアを見てみれば、ロンドンのシティがウォール街を凌駕している。国際的な株取引の約半分、国際新規公開株の55%、国際通貨取引の35%は、ロンドンのシティが占めているのだ。

また、イギリスの外国為替取扱量は、1日当たり2兆7260億ドルであり、世界全体の40%を占めている。もちろん、断トツの1位である。2位のアメリカは、イギリスの半分以下の1兆2630億ドルである。「国際金融センター」としての地位は、いまだにロンドンのシティが握っているのである。

なぜロンドンのシティが、これほど世界金融に影響力を持っているのか?

もちろんそれは、イギリスがタックスヘイブンの総元締めだからである。

国際決済銀行(BIS)によると、イギリスとその海外領のオフショア銀行預金残高は推定3兆2000億ドルであり、世界のオフショア市場の約55%を占めているという。つまり、タックスヘイブンのおカネの多くは、イギリスが取り扱っているのである。

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