地球温暖化は農業と漁業に何をもたらすのか 環境の変化に合わせた適応策が必要に

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それでは、魚などの水産物はどうでしょうか。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第五次評価報告書によれば、「1971年から2010年において、海洋表層(0~700m)で水温が上昇したことはほぼ確実」とされています。農作物と違い、魚は移動できるので、魚が住みやすい水温の場所を求めて移動してしまえば、漁場が変化する可能性は大いにありえます。

実際に、農林水産省 農林水産技術会議事務局と独立行政法人 水産総合研究センターが主催した2014年の研究成果発表会の資料を見ると、海面水温の上昇による漁業への影響が出ていることがわかります。

アワビやイセエビの漁場にも変化

たとえば、大西洋マダラは、海面水温の上昇でエサ不足になり、資源量が大きく減少していることが報告されていますし、北大西洋の冷たい海に住む魚ももっと北へ移動していることが報告されています。

また、日本付近でも、愛媛県の宇和海の海域では温帯性の海藻の生息域の南限が北上しているなど、海中の生態系に変化が起こっており、それに伴って、海藻を食べるアワビやイセエビが今までの漁場では獲れなくなってきているようです。

このように、気温や水温の変化は、生物の生態系に何らかの変化をもたらしていることは確かです。ただ、生物の生態系が変化することと、農林水産業が打撃を受けることは、必ずしもイコールではありません。おコメの事例にもあるように、環境の変化に合わせて適応策を講じれば、気温や水温の影響をある程度免れることができます。今後、さまざまな分野でこのような適応策が必要になっていくことでしょう。

今井 明子 気象予報士・サイエンスライター

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いまい あきこ / Akiko Imai

2001年京都大学農学部卒。酒メーカー商品企画部、印刷会社営業職、編集プロダクションを経て、2012年からフリーに。子ども向けや一般向けにわかりやすく科学を解説する書籍や記事を多数執筆。著書に『気象の図鑑』(共著、技術評論社)、『異常気象と温暖化がわかる』(技術評論社)がある。ほか、医療・健康、教育、旅行分野も得意。気象予報士として、お天気教室や防災講座の講師も務める。

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