安倍自民党の「独走」、実は盤石とはいえない

存在感が増している二階幹事長の思惑とは?

その一例が、最大派閥の清和会(細田派)が昨年9月に軽井沢で行った研修会で配布した得票率の一覧表だ。衆院小選挙区選出の所属議員46名のうち、野党共闘などが実現されればひっくり返されかねない危険ゾーンの「50%未満」は18名。細田博之会長は「漫然と闘ったら大変なことになる」と檄を飛ばした。

こうした現状は清和会に限らない上、5月27日には衆議院選挙区画定審議会の勧告期限を迎える。それまでに出される答申によって影響を受ける議員からは、激しい突き上げがくるだろう。とりわけ僅差で当選した議員にとっては、死活問題。実際に昨年の参院選でも、合区問題で大いにもめた。

さらなる懸念は野党共闘ならぬ「与党共闘問題」だ。安倍首相は昨年12月24日、橋下徹前大阪市長と昼食を共にした。これには菅義偉官房長官や松井一郎大阪府知事も同席。IR法成立にともなうカジノ整備や大阪万博誘致など、今後も連携していくことを確認した。

そして同日夜、自民党の二階俊博幹事長と公明党の井上義久幹事長が会食。あたかも憲法改正に意欲を見せて軸足を日本維新の会に移しつつあるとされる官邸と、公明党を繋ぎとめようとする党本部という構図に見える。

実際のところ、昨年7月の参院選で日本維新の会は比例区で515万3584票を獲得。公明党の757万2960票には及ばないものの、選挙区を含めて7議席を獲得した。自民党が単独で圧倒的に強いのなら、憲法観などで差のある公明党よりも、日本維新の会と組む方が簡単だ。何よりも日本維新の会から安倍首相側に秋波を送っている。

だが公明党と日本維新の会の「実力の差」はこれ以上に大きい。そもそも日本維新の会の得票力が見込めるのは近畿地方が中心で、その他は昨年の参院選比例区で当選した渡辺喜美氏の地元・栃木県や片山虎之助氏の地元・岡山県などで、その他の地域での比重は決して大きくない。一方で公明党は、岩手県、新潟県、富山県、滋賀県を除く都道府県で、10%以上の得票率を維持している。小選挙区が中心になる衆院選でまんべんなく勝とうとするのなら、こうした政党と組む方が得策だ。

二階氏の影響力が強くなっている

それを十分に知る二階幹事長は、あえて公明党との橋渡しを買って出ているのだろう。さらに二階氏は自他とも認める親韓派であるにも関わらず、冒頭で述べた韓国に対する強い措置についても、6日夜のテレビ番組で「韓国は面倒な国」と述べて政府の方針を称賛した。

ただ二階氏は総理総裁を狙うタイプの政治家ではないために、その意味では安倍首相にとっての脅威とはなりえない。だが無所属3名を含めて44名の志帥会を率いる二階氏の力は、党内でじわじわと浸透している。昨年は早期解散をほのめかし、首相の専権事項を「侵した」こともある。二階氏がさらに動けば、「政高党低」が崩されることも大いにありうる。

以上を見れば、年明けの政局は不確定要素が極めて多い。こうした流動的な動きを察知してのことだろうか。1月5日に都内で開かれた連合の新年交歓会で神津里季生会長は、「今年は酉年で昨年は申年。“去る者は追わず”というが、私は去る者は引き留め、とるものはとる」と干支にこじつけて、「自民党とも民進党とも手を繋ぐ」ことをほのめかした。

安倍首相は年初の挨拶で、12年前の郵政解散や24年前の細川政権誕生を持ちだしたが、あれほど時代の寵児としてもてはやされた小泉純一郎元首相も細川護煕元首相も、すでに過去の人。年明けの永田町はそのような変化の胎動すら感じとれるほど、静かでかつ穏やかだ。

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