鉄道メーカー「世界3強」、格差広がる台所事情 政府支援仰ぎ、身売り観測に中国が触手も?

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縮小

では、どのようにしてシェア向上を目指すのか。そのカギはやはり9月7日に発表されたフランス東部のベルフォール工場の業務を縮小し、工場の従業員480人中400人を配置転換するという計画にある。

アルストムのラファルジュCEO(記者撮影)

ベルフォール工場は機関車などの製造事業のほか、保守・修理などの事業も行なっているが、今後2年間で生産は3割減る計画で、工場機能を維持できなくなる。そこで製造事業をアルザス地方のレッシュショフェン工場に移管し、ベルフォール工場には保守・修理部門だけを残す計画だ。

配置転換といえば聞こえはいいが、ベルフォール工場とレッシュショフェン工場は200キロメートル離れている。通勤できなければ会社を辞めざるを得ない。フランス政府は、次世代TGV開発では「4000人以上の雇用が見込める」として2017年春の大統領選に向け猛烈にアピールしていたが、ベルフォール工場の業務縮小は寝耳に水だった。

フランス政府は即座に事態の打開に動いた。ベルフォール工場の稼働率を維持できるよう、フランス国鉄などにTGV6編成と入れ替え機関車20両をアルストムに発注するよう要請、さらに将来開業予定の路線についても、完成を待たずに高速列車15編成を発注する約束をした。こうした政府の支援に対してアルストムはベルフォール工場の製造機能の維持を決断、配置転換から一転、逆に増員するという決定を下した。政府とアルストムの合意は昨年11月28日に発表されたが、ラファルジュCEOがこうした流れになることを事前に予想していたとしたら、相当な策士といえるだろう。

ボンバルディアは航空機が足かせに

「他の交通モードとコラボレーションしながら公共交通をより便利なものにしていきたい」――。

アルストムの記者会見の翌21日、今度はボンバルディアの鉄道事業を担うボンバルディア・トランスポーテーションのローラン・トゥロジュ社長の会見が行なわれた。経営目標を明確にしたアルストムの会見とは異なり、ボンバルディアではデジタル技術をふんだんに取り入れた鉄道の技術革新が会見の中心となった。

ボンバルディアの業績は苦戦が続く。2015年12月期の決算は売上高が前期比9%減の181億ドル(2.1兆円)、営業利益(EBIT)は48億ドル(約5600億円)の赤字だ。赤字額は2014年12月期の約8倍に拡大した。赤字の原因は新型の小型航空機の開発費用が膨らんだこと。2016年12月期についても第3四半期時点で、売上高は前年同期比9%減の119億ドル(約1.4兆円)と減少傾向は止まっていない。利益面でも1.3億ドル(約150億円)の営業損失と赤字が続いている。

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