なぜ日本は「女性の生産性」が極端に低いのか 男性と「同一労働」をさせる覚悟、する覚悟

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私は、保育所などを活かすためには、経営者を「女性を有効活用せざるをえない『窮地』」に追い込むようにしなくてはいけないと考えています。窮地とは、生産性を上げるよう、外部からプレッシャーをかけることです(参考:日本を「1人あたり」で最低にした犯人は誰か)。

女性を活用せざるを得ない「窮地」をつくり出す

実際、女性の給与水準が高いデンマークは、国が小さいので常に窮地に陥っており、いつもそれを乗り越える戦いを余儀なくされています。また、女性をフル活用している米国は、国全体がROE至上主義なので、ある意味で常に自分たちで「窮地」という状況をつくり出し続けているとも言えます。

これらの国から学ぶべきは、「女性の活躍が大事だ」という理念を掲げさえすれば、それが自動的に実現されるわけではないということです。利益を高めていくために女性をフル活用しなければいけないという状況に陥っていることが、結果として「女性が活躍する社会」をつくっているだけなのです。

米国が自らに課した「窮地」という状況をうまく活用しているのは、リーマンショックから回復して、株価が史上最高値を更新したことからも明らかでしょう。それと比較して、バブル期に隆盛を誇ったという過去の実績はすごくても、いまだに日経平均が低いままの日本企業が、これまでシビアな目標を設定してきたかといえば、甚だ疑問だと思わざるをえません。

日本企業では、経営者が生産性を上げる努力をしなくても、会社が買収されることも、経営者の首が飛ぶこともほとんどありません。これは、あまりにも「甘い」のではないでしょうか。日本の経営者にも、「女性活用」への覚悟が求められます。

もちろん、女性にも、男性と同一労働をするという意識改革が必要です。報道によると、若い世代でも「専業主婦」志向が高止まりしているそうですが、そのような意識は変えなければなりません。

また、「日本の文化」「伝統的な家族」などといって、女性の社会参加に否定的な意見もありますが、そう言うなら、瀕死に陥っている社会福祉制度をどうするのかという問題に答えていただく必要があるでしょう。

さらに、女性に同一労働を求めると出生率がさらに下がるという指摘もありますが、それはデータに基づかない感覚的な指摘にすぎません。海外だけではなく、国内でも、有職女性のほうが出生率が高くなるというデータがあります。

女性の生産性を高めるか、移民を迎えるか、社会保障を諦めるか。私には、答えは明らかだと思います。

デービッド・アトキンソン 小西美術工藝社社長

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David Atkinson

元ゴールドマン・サックスアナリスト。裏千家茶名「宗真」拝受。1965年イギリス生まれ。オックスフォード大学「日本学」専攻。1992年にゴールドマン・サックス入社。日本の不良債権の実態を暴くリポートを発表し注目を浴びる。1998年に同社managing director(取締役)、2006年にpartner(共同出資者)となるが、マネーゲームを達観するに至り、2007年に退社。1999年に裏千家入門、2006年茶名「宗真」を拝受。2009年、創立300年余りの国宝・重要文化財の補修を手がける小西美術工藝社入社、取締役就任。2010年代表取締役会長、2011年同会長兼社長に就任し、日本の伝統文化を守りつつ伝統文化財をめぐる行政や業界の改革への提言を続けている。

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