【産業天気図・住宅/マンション】赤字も覚悟の値下げ販売なしに回復への展開見当たらず
08年4~9月 | 08年10月~09年3月 |
住宅・マンション産業の2008年度は通年「曇り」模様となりそうだ。最大の理由はマンション販売状況の改善予想が不透明なためだ。
マンション販売に翳りが出始めたのは07年の8月。不動産経済研究所調べの月間契約率が、好不調の分かれ目である70%を切って65・6%になった。ちょうど、サブプライム問題が米国市場の株価を直撃しだした頃で、それ以来、契約率は直近の4月まで9ヵ月連続で70%を割り込んでいる。深刻なのはマンション一次取得者である30歳代半ばの主力購買層が完全に様子見状態に入っていることだ。
供給側であるマンションデベロッパーは、ここ数年、ジリジリ上昇を続けてきた用地代や建設費をそのまま販売価格に上乗せしてきた。ところが、昨年後半以降、マンション販売に翳りが見え始めると同時に、改正建築基準法による建築確認取得の遅れが表面化し、業績への不安が一気に拡大してきた。
それでも、三井不動産<8801>、三菱地所<8802>、住友不動産<8830>、野村不動産ホールディングス<3231>など大手不動産会社は、マンション販売の鈍化をオフィス賃貸や資産運用収入で補えるため、まだ余裕が見える。ところが、マンション専業となるとそうはいかない。大手クラスの大京<8840>をはじめ、日本綜合地所<8878>、ゴールドクレスト<8871>、コスモスイニシア<8844>などが軒並み、今09年3月期業績は大幅な減益予想を出している。さらに、併営する不動産流動化事業のウエートが大きいジョイント・コーポレーション<8874>などの場合、ダブルパンチで減益予想幅はさらに大きくなっている。
各社とも今期は減益でも来10年3月期は期待を込めて回復をと見ている点で一致しているが、マンションの販売不振がいつまで続くのか断言するのは難しい。はっきりしているのは、現在のマンション価格が依然、購買層の購入意欲を促す水準にはなっていない点だ。ここ1年ほどで用地代や建築費で15%程度の値上がりがあったと言われる。そのため、乱暴な言い方をすれば15%程度値下げすれば、顧客を動くとも言われる。しかし、マンションデベロッパーの粗利率がそもそも20%前後なので、値下げ販売は赤字に直結しかねず、特に中小デベロッパーなどは極力回避したいところだ。一方で、金利上昇や消費税値上げといった購買層の背中を押す材料も当面見当たらない。そのため、今期後半以降は、中小デベなどによる赤字覚悟の値下げなしには、マンション販売の本格回復への道筋は付かないと言える。
【日暮 良一記者】
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら