「ISと結婚した女性」の写真が語っていること ヤズディ教徒が「悪魔崇拝者」にされた理由

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彼らはさらに、4月になると着色した卵を割って、その殻を赤いポピーの花と一緒に家の高いところの壁に貼り付ける。これは、その氷を「神の使徒」として送られた孔雀天使が壊したことで、草木や花々が生まれ、地球に春が訪れた、という神話と重なるとされる。孔雀天使が神の使徒として地上に降りてきたのは、ちょうど4月だったと伝えられているからだ。

また、彼らに伝わる神話には、旧約聖書に描かれる「ノアの方舟」が登場する。 方舟はシンガル山の頂上に流れ着いたところで、岩にぶつかり船に穴が空いてしまった。すると蛇が現れ、身をねじって穴を塞いだと伝えられている。

ヤズディの人口は世界全体で約60万人~100万人と言われ、イラク、イラン、トルコ、シリア、アルメニア、グルジア、ドイツなどの地域に分散している。そのうち約30万人が、イラク北西部のシンガル山や周辺の村々で暮らして来た。

2014年8月3日、「ダーシュ(IS)が攻撃してきた」

そのささやかな暮らしが突如一変したのは、2014年の8月3日のことだった。「夜中の2時頃、グルゼリック村に住む友人から突然電話がありました。『ダーシュが攻撃してきた』と知らせてきたのです。

2014年8月3日、シンガル山南麓の村々がISに侵攻され、村から逃れた人々は山の頂上を目指して移動した。頂上へと続く道には、自宅から持ち出されたと思われるものが散乱している(写真:筆者)

6月にモスルがダーシュに制圧されて以来、いつシンガルの村々も攻撃されるかわからない状態だったので、当時私は夜になると村の友人たちと交代で警戒にあたっていました」

シンガル山南麓の村シバシェハドレ村出身で、現在ドイツに暮らすミシェルは当時をこう振り返る。シンガル山周辺の村々が「ダーシュ」、すなわちIS(以下、ダーシュ)の侵攻を受けた瞬間だった。

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