【産業天気図・ソフト・サービス】金融・公共の大型案件一巡で08年度は通期は「曇り」

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予想天気
   08年4~9月  08年10月~09年3月

ソフト・サービス業界は、メガバンク向けのシステム開発が一巡するなど、設備投資減速が顕著になってきた。08年4月に日本版SOX法の開始で期待された内部統制関連のIT投資の需要も、景況感悪化によって投資を先延ばしにするケースも出てきた。08年度の天気見通しは前半・後半を通じて「曇り」が予想される。
 
 直近の日銀短観(08年3月調査)によると、大企業ではソフトウエア投資計画が前年比2.2%増加した一方、中小企業では同10.7%減少。景気減速感が強まるなか、特に中小企業においてIT投資が減速していることがうかがえる。こうした中、中小企業を顧客の多く抱える大塚商会<4678>は、4月から見込んでいた内部統制需要が当初の想定よりも引き合い弱く、今09年3月期期は厳しい見通しだとする。一方、同じく中小企業に強みを持つオービック<4684>は、主力の業務ソフトに新バージョンを投入することで、前08年3月期に続き連続増益を見込んでいる。
 
 また、同じく日銀短観によると、金融機関に関しては、保険業でのソフト投資計画は前年比29%増えた。が、これまで業界の好調を牽引してきた銀行および証券向けが軟調で、それぞれ同4.3%減、18%減と後退。証券向けに強みをもつCSKホールディングス<9737>は、今期から本格展開する地銀向け証券システムが、こうしたIT投資慎重化の影響から受注が伸び悩んでいる。また、今年5月に完全子会社したコスモ証券も今期中の赤字脱却は厳しい見通しだ。
 
 従来、公共や通信の大型案件に依存していたソフト・サービス業界だが大型案件の一巡を迎えた今年度、大型案件の依存脱却に向けて、各社とも収益源の多様化を急いでいる。例えば、公共・通信に強みを持つNTTデータ<9613>は今期、公共案件が大幅減少する見通しだが、その減少分を金融向けや製造業向けで補う見込みだ。前期に獲得した海外子会社が貢献することも後押しし、今期も増益を計画する。また、顧客企業のサーバーを管理するデータセンタービジネスでも、サーバーの有効活用技術の「仮想化」など新サービスも本格始動。新日鉄ソリューション<2327>と日本オラクル<4716>も共同でサービスを開始、今期需要増を見込む。
 
 IT投資が鈍化する中、08年度はコスト削減がこれまで以上に重要になるだろう。もともと、ソフト・サービス業界では、開発期間の長期化等による案件の不採算化が問題になっており、各社とも事前審査の徹底等による不採算案件発生防止に一段と力を入れ始めた。また、人件費削減に向けたアウトソーシングも従来のインドや中国だけでなく、さらに賃金の安いベトナムなどへも委託する動きが活発になってきている。

【麻田 真衣記者】

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