「部下の力を引き出せない上司」の残念な指示 「正解」を教えてしまうと逆に覚えない

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「助長」の男は、自分の畑の苗の成長をよくしたいと考えたのなら、どうすればよかったのだろう? 適切な量の肥料をやり、渇いた日には水を、雨続きの日には水抜きをして、苗が育つのに最良の環境をつくってやり、成長自体は苗に任せる。それがいちばんよい方法だろう。

モチベーションを下げてしまう要因を除去すると、部下の意欲が勝手に湧いてくる。でもどうやって? 「やる気のない部下たちが、自然にやる気を出して働き始めるなんて、信じられない」と、すっかり不信感にとらわれている上司も少なくないと思う。だが、人間は本来、意欲のカタマリであることは子どもを見ていればすぐにわかる。

赤ん坊は転んでもまた立ち、転んでもまた歩こうとする。何度痛い目にあっても、さらに新しいことにチャレンジし、できることを増やしていく。人間は本来、「できない」を「できる」に変えることがこの上なく大好きな生き物なのだ。

ところが、小学校に入って以降は学ぶ意欲を急速にしぼませる子どもが大半だ。教えられたことを「できる」のが当たり前とされ、できないとダメ出しを食らい、できる子との比較をされるようになる。このために学ぶことが楽しくなくなり、意欲を失ってしまうのだ。

ところが面白いことに、社会人になって比較されることがなくなると、市民マラソンやトライアスロンなどの運動が大好きになる人がいる。学校時代はクラスメートと比較され、運動嫌いだったのに、他人と比較されることがなくなると、自分のタイムが少しずつよくなるのを感じてうれしくなり、運動が大好きに変わるという。

「できない」を「できる」に変えるという、就学前の子どもの頃の学び方を取り戻したとき、嫌いだったものが好きなものに変わるようだ。これは勉強にも言えるようで、社会人になってから勉強が楽しくなった、と言う人も多い。「できない」が「できる」に変わる瞬間を味わえることが勉強の醍醐味になるからだろう。

部下に働くこと自体を楽しんでもらう方法

上司の仕事は、部下に働いてもらうこと。働いてもらうには、働くこと自体を楽しみ、意欲を持って取り組んでもらうこと。そのためには、「できない」を「できる」に変えるという、人間が原初から持っている性質を活かすのが一番だ。でもどうやって? 

「できない」を「できる」に変える瞬間を味わえることが学習意欲の基本なのだから、その瞬間をできるだけ増やしてやるとよい。と同時に「できる」確率をできるかぎり増やす必要もある。

そのためには、解決不能なほどの難問を与えるのでもなく、あまりに簡単すぎるものでもなく、少し考えないとうまく解けないような、しかし少し頑張れば解けるようなほどよい難問を部下に与えることだ。それを解けたとき、「やった!」という快感が味わえる。

まだハイハイを始めたばかりの子どもに「走れ!」とけしかけたって、意味がない。むしろ劣等感を植え付け、「僕にはできない」と泣き出し意欲を失ってしまうのがオチだ。目標を掲げるには、「できない」が「できる」に変わる瞬間をその都度味わえる、ステップ・バイ・ステップなものに設定したほうがよい。

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