「部下の力を引き出せない上司」の残念な指示

「正解」を教えてしまうと逆に覚えない

ところが上司がよかれと思い、失敗しないようにと先回りして細かく指示を出すと、「やらされている感」が強くなる。「受動感」が強くなるのだ。受動感を強く感じると、人間は無気力になる。工夫しようとしても先に答えを言われたり、「そうじゃない、こうしろ」と自分なりの取り組み方を禁止されたりするので面倒くさくなって、面白くなくなるのだ。こうなると、「指示待ち人間」の一丁上がり。だから、部下に事細かに指示を出すのは望ましくない。

「お客さんへのメールの場合は、こう書いたほうがわかりやすいし失礼がなくていいよ」と答えを教えてしまうと、部下は「ああそうですか」と言われた通りにキーボードを打つかもしれないが、メールの書き方をなかなか覚えることはできない。なぜそう書かなければならないのか、理由をきちんと説明しても、「ああそうなんですか。わかりました」と答えはするが、翌日になると忘れてしまう。

すでに述べたように、人間は答えをあっさり教えてもらえると、「またこの人に聞けばわかるから、いいや」と、覚えなくなってしまう生き物らしい。だから、安易に指示を出すやり方を続けていると、底の抜けたバケツに水を注ぐような感じで、いつまでたっても仕事を覚えてもらえなくなる。

だから教えるときは、指示をなるべく出さないようにし、質問形式で部下にどうしたらいいか考えてもらうようにする。

「この文章だと、ああも解釈できればこうも解釈できるので、お客さんがどっちかわからなくなるかもしれないね。どうしたらいいかなあ?」

「このままだとこんな結末になっちゃう気がするね。それはちょっとまずいなあ。どうしよう?」

「これ、どこから手をつけたらよいか、さっぱり見当がつかないね。仕方ないから、まずは気づいたことをなんでも列挙してみようか。何かある?」

そうやって、答えを言わずに、部下に答えを追究するよう促す。もし部下がトンチンカンな答えを言っても「そうじゃなくてね……」と否定的な表現をせず、「おお、面白いね! ほかにもある?」とどんどん意見を促そう。

部下を質問で動かす3つの利点

質問形式のよいところは、次のようなものだ。

『自分の頭で考えて動く部下の育て方 上司1年生の教科書』(文響社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

①なぜ問題だと考えるのか、質問の前提として理由(あるいは情報)を伝えることができる。

②何かしら答えをひねり出さなければならないので、「能動性」を部下から引き出すことができる。

③自分の頭で考えたりすることで、記憶がしっかり刻まれる。

自分がひねり出した解答は、納得感も得られやすい。「お、それいいねえ」と上司が追認してくれると、自分でなかなかよいアイディアを導き出せた、という自己効力感も得られやすい。

上司が「正解」を教えてしまうより、理由や情報を提供しながら質問し、部下に追究することを促し、自ら答えを導き出そうとしてもらう。そうすると、仕事の覚えはずいぶん早くなる。

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