東京で道路よりも鉄道が発達した3つの理由 4割が未完成「東京の伸びしろ」は道路にある

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そこで東京では、都市空間を立体的に利用して、首都高速道路(首都高)や地下鉄が整備された。既存の道路や水路などを利用して高架橋やトンネルをつくり、そこに新しい道路や鉄道を通し、都市全体で不足した交通処理能力を補おうとしたのだ。

ところが、自動車交通は十分に改善されなかった。首都高では、郊外を通る迂回路などの整備が遅れたこともあり、年々交通量が増え、渋滞が頻発した。地平の一般道路では、路面電車の軌道撤去で車線数が増えたものの、増え続ける交通量をさばき切れなかった。

地下鉄を含む鉄道は増え続ける輸送需要に対応しつつも、自動車交通の不足分を補うことで、都市全体の交通の混乱を緩和する役割を果たした。自動車交通は渋滞などで利便性が低下したのに対して、鉄道は満員電車という問題を抱えつつも、所要時間が安定した旅客輸送サービスを提供してきた。

アンバランスな道路と鉄道の整備状況

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東京の鉄道は、このような特殊な環境にさらされながら発達してきた。つまり、鉄道網の発達の陰には、道路網の貧弱さがあったのだ。

結果的に東京は、冒頭で紹介したように交通の状況がアンバランスな都市になってしまった。道路網と鉄道網の整備状況に、今も大きなギャップが残っているからだ。

東京の道路網は現在も未完成だ。たとえば都市計画に基づいて計画された道路(都市計画道路)は、全体の約6割しか完成していない。

ただし見方を変えれば、残り約4割の未完成道路は東京に残された発展の「伸びしろ」とも考えられる。未完成道路には、その沿線の街並みや都市全体を変える可能性が秘められているからだ。そもそも道路は都市にとって重要な社会基盤であり、交通路であるだけでなく、ライフラインの通路や災害時の避難路など、都市機能を支えるさまざまな機能を果たしているので、今後もそれを整備する必要性は高い。

東京の最大の弱点とされる渋滞は、道路整備によって緩和されつつある。たとえば首都高では、2015年の中央環状線全線開通で都心部の渋滞損失時間が約5割減少した。これによる好影響は、高速バスによる空港アクセスやトラック輸送を中心とした物流などに及んでいる。

いっぽう東京の鉄道網はほぼ完成の域に達しており、道路網ほどの「伸びしろ」がなく、今後はこうした道路整備が輸送人員の推移に影響を与えるかもしれない。ただし、それが鉄道の混雑緩和や東京全体の都市機能の改善、交通の利便性向上につながれば、多くの人にメリットをもたらすことになるだろう。

川辺 謙一 交通技術ライター

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かわべ・けんいち / Kenichi Kawabe

1970年生まれ。三重県出身。茨城県南部在住。東北大学工学部卒、東北大学大学院工学研究科修了。化学メーカーの工場・研究所(筑波)勤務後、独立。技術系出身の経歴と、絵や図を描く技能を生かし、高度化した技術を一般向けにわかりやすく翻訳・解説。鉄道以外のテーマにも活動範囲を拡大中。著書に『図解まるわかり 電気自動車のしくみ』(翔泳社)等多数。

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