中央線快速「運行ダイヤ」はこうして作られる 土休日に特快を増やす「配給列車」とは何か

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物理的にも、特急停車駅を除くと現行の10両編成に合わせたホーム長であり、グリーン車を連結するにはホーム延伸工事が必要になる。しかし、混雑が著しい路線であればあるほど着席ニーズは強まるし、距離的にも列車線に匹敵している。東京―高尾間53.1kmは、東海道線東京―藤沢間51.1km、高崎線東京―鴻巣間50.3kmを上回る。

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また、JR東日本が公表する輸送量データを見ると、現在最新の2015年度と10年前の2005年度の比較では、ピーク1時間の中央線快速の輸送量(中野―新宿間)は8万8650人から8万3260人へ6%、宅地化が急進展した青梅線(西立川―立川間)でも3万5550人から3万1120人へ、12%減少している。両線の数字を見ると、都心回帰の傾向を聞くにつけ遠方ほど減り幅が大きいと察せられる。すると、運賃収入の減少を補う営業施策が考えられて当然である。

グリーン車を連結するのは、中央快速線が東京―大月間のE233系全列車と、青梅線立川―青梅間への直通列車全列車。車両運用の面からも特快と快速を分けることは困難ゆえに特快限定のようなことはない。編成は現行の10両編成に2両を加え(東京寄りの4・5号車)、12両とする。6両と4両に分割される編成は基本編成側になるため、付属編成が直通する五日市線、八高線、富士急行線には入らない。また、青梅・五日市線内用の編成も対象外である。

緩行線駅にオレンジの列車は止まるか

果たして、かつては「国電」と呼ばれたタイプの電車線区へ導入される初のケースで、従来にない高頻度運転で、その供給座席数も大量になる。しかし、そこで中央線の沿線住民層の特徴が発揮され、比較的近距離の利用も多く見込めるのだろう。また、少し穿った見方をすると、快速においては駅数が多く複数の待避もあるため、距離の割に時間がかかる。その面でも、距離ではなく「快適な時間を買う」という観点から需要は高いように予測できる。青梅方面や高尾以遠への行楽利用にも絶好の車両となろう。

ところで、中央線グリーン車連結の発表資料には、導入区間全44駅と車両基地を、12両対応に設備や信号を改良する旨の計画が記載されている。この「44」の数字と東京―大月間および立川―青梅間の駅数を照合してみると、緩行線のみの停車駅は含まれないことがわかる。そうすると、現在は早朝と深夜に限り、オレンジ色の電車が緩行線に各駅停車で運転(総武線電車の直通は行わない)されているが、それには12両編成が入線できないことになる。したがってその際は中央線快速と総武線直通の各駅停車が終日にわたり分離されるのではないか、と想像される。様子は大きく変わりそうだ。

鉄道ジャーナル編集部

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車両を中心とする伝統的な鉄道趣味の分野を基本にしながら、鉄道のシステム、輸送の実態、その将来像まで、幅広く目を向ける総合的な鉄道情報誌。創刊は1967年。

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