中央線快速「運行ダイヤ」はこうして作られる 土休日に特快を増やす「配給列車」とは何か

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特急列車や貨物列車が線路を共用することも、稠密ダイヤの中央線では悩ましい。特快ダイヤからは、30分間隔の特急を挟み込む姿が如実に読み取れる。2013年の改正で本数を増やして利便向上を目指したが、等間隔ではなく7~8分と接近した場合もあれば、15分以上開いてしまう場合もある。利用者にしてみれば、ありがたい形ではない。

貨物列車は武蔵野線から連絡線を経由して国立以西で関わってくる。編成が長く加減速が緩慢なので、一つの閉塞区間への進入から抜け出すまでの所要時間が長い。ゆえに前後4分程度ずつ空ける必要が生じる。国立―立川間は青梅線直通列車が分岐する前の区間のため、日中でも特快と快速で毎時14本、特急を加えて計16本がひしめき合う。そこに8分以上の隙間が求められる。さらに、立川駅の待避線有効長が長くない。長編成列車は国立―八王子間を走り切る必要があり、ダイヤ作成がなおさら難しいそうだ。

土休日に特快が増える理由

ところで、平日5本、土休日6本と分かれる特快の運転パターンにも、じつは「需要に応じた」だけではない隠れた理由がある。電車の定期検査を行なう必要から、鉄道工場(首都圏では大崎の東京総合車両センター)への送り込み、または整備済み車両の回送のため定期的に発生する「配給列車」(自社内の車両の移動という意味で配給列車と呼ぶ)の存在である。こうした列車は平日に計画されるので、逆に運転しない土休日はスムーズな運転が旨の特快をダイヤに入れることができる。しかし、平日はダイヤの擦り合わせが必要なため、その1本分を快速にしているのだ。多くの快速は三鷹、国分寺、立川の各駅で特快や特急を2~3回待避するダイヤだが、当該の列車には待避がないという特徴がある。ちなみに配給列車は毎時設定されているわけではないが、時間帯別に特快と快速が入り混じるのも分かりづらさを助長するとして、平日は特快を1本減のパターンに落着させた。この因果関係が、土休日の特快が平日より多く行楽ニーズにもマッチしたということだ。

このように、非常に稠密な電車線的な路線に異種の列車が入り混じることで、中央線の列車ダイヤにはどうしても歪みが出る。しかし、その中でいかに状況に応じた調整を重ね、均してゆくかが労力の払いどころとなっている。

2020年にはグリーン車が導入される予定だ(撮影:塩塚陽介)

中央線快速におけるこれからの最も大きな話題は、2020年度のスタートを予定するグリーン車連結である。2015年2月に計画が発表された。

中央線は首都圏の主要5方面の通勤電車の中で、唯一、グリーン車サービスができずに残ってしまっていた。前記したように、山手線や京浜東北線のような「電車」に特化した路線であり、その面では「なくて当然」といった概念があったかもしれない。

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