韓国人がこだわる「正しい民主主義」とは何か 歴史から理解するナショナリズム

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ナショナリズムとポピュリズムが極端に発動されたのが、中国の文化大革命(1966~76年)だった。最高指導者、毛沢東・党中央委員会主席が党内の権力闘争の一環として政敵を倒すため、党内に「走資派」(そうしは:資本主義に忠誠を尽くす連中)がいるとして、大衆運動を展開。青少年からなる「紅衛兵」(こうえいへい:紅い(あかい)社会主義を守る近衛兵)を組織させ、官公庁や国営工場、公共団体、学校などあらゆる組織で、職制上の上位者を糾弾させた。

毛は社会主義革命を徹底するとして、中国共産党以外の権威を否定し、国民を文化大革命に巻き込んだ。紅衛兵は大学の教授や組織のトップを引きずり出し、大衆裁判によって暴言を浴びせ、暴力をふるった。

中国・内蒙古出身のモンゴル人である静岡大学の楊海英教授(文化人類学)によると、辺境部にある省や自治区では、政府や人民解放軍が住民を大量虐殺したケースがいくつもある。中には人肉を食べたケースもある。中国南部の広西チワン族自治区では食人行為によって処分を受けた者は、共産党員だけで4万人以上にのぼるという。

文化大革命の全面的な真相究明はなされていない

文化大革命はのちに部分的には否定されたが、全面的な真相究明はなされていない。その死者は数十万説から数百万人説まである。

安直な自国愛は破滅につながる。グローバル化が深化する一方で、不安も高まる。そんな不安を緩和するには、やはり歴史を振り返り、人間の生き様を学ぶほかない。

テレビ番組で芸人が過去の失敗を披瀝する「しくじり先生」という人気番組がある。それを国民レベルで追体験できるのが、失敗の連続である「歴史」である。態度が傲慢になり、相手を見下すような発言が横行する今だからこそ、「世界史上のしくじり先生」から謙虚に学べることがあるはずだ。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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