韓国人がこだわる「正しい民主主義」とは何か 歴史から理解するナショナリズム
民主主義の政体はいくつもあるが、木村教授によると、韓国が議院内閣制よりも大統領制のほうが正しい民主主義だと考えたのは、国民が自らの意思で直接指導者を選べるからだ。そして、もう1つの理由は、「第2次世界大戦の覇権国家だった米国が採用していること」(木村教授)だった。
韓国には小国の自覚がある
南北分断前の朝鮮時代を含め韓国は、中国、ロシア、日本、米国といった国々に翻弄されてきた。それゆえに小国の自覚があり、世界のトレンドには敏感である。最も力を持つ米国が大統領制を採用しているならば、それは正しい制度として、韓国ではすんなり受け入れられるというわけだ。
木村教授によると、さらに、韓国人が正しい民主主義にこだわる理由があるという。
それは、今回のデモが大規模ながらも平和裏に行われていることを、世界に誇るべきものとして報道している韓国メディアの姿勢にヒントを見出せる。つまり、平和的にデモをする市民は理想的な政治的市民であり、正しい民主主義の実践が、韓国人のアイデンティティにつながっているのだ。
小国である韓国は、米国や日本のように大国になれない。しかし、民主主義という文化やイデオロギーでは、世界的な模範になれるかもしれない。木村教授のコメントに付加すれば、民主主義の実践は、愛国と直結するほどの自然な作法なのである。
行き過ぎた愛国主義がもたらすのは?
週刊東洋経済は12月24日号(19日発売)で『ビジネスマンのための近現代史』を特集。世界史から見た、「ナショナリズム」「ポピュリズム」「保護主義」を追っている。愛国自体は悪いことではない。だが、歴史を振り返ると、ときに愛国主義が行き過ぎ、排外主義につながるナショナリズム(愛国主義)やポピュリズム(大衆迎合主義)へと転化したケースは枚挙にいとまがない。
人びとに惨禍をもたらす戦争も、ナショナリズムが利用されてきた。経済的にも自国経済の利益だけを考え、貿易の門を閉ざす保護主義へとつながる。先の大戦も、経済のブロック化が原因の一つだった。
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