「いただきます」の日本語に隠された深い真意

悪には懺悔し、感謝の気持ちを持って生きる

そんな中、以前、こんなことがありました。ある時、仕事の出張でイギリスへ行くことがありました。長時間のフライトで唯一の楽しみは、食事です。その食事をいただこうと、いつも通りに手を合わせ「いただきます」と口にしました。すると横に座っていらしたイギリス人の方に、「素晴らしい」と日本語で褒められました。お話してみると、その方は日本にもう11年も住んでいらして、福岡の大学で英語を教えていらっしゃる方でした。私が機内であまりに堂々と手を合わせて「いただきます」と口にするものだから、驚いたそうです。

これがきっかけで、私は自分が僧侶であることも明かし、「いただきます」の意味をはじめ、日本文化について考えることになりました。そして、「いただきます」を英語にするとどうのようになるのか尋ねると、イギリス人の先生は、僧侶の立場からどのように英語にするのか興味深いので聞かせて欲しいと、逆に尋ねられました。その時、初めて当たり前のように使っていた「いただきます」の意味を深く考えました。

「いただきます」の意味

食前に口にする「いただきます」の意味を尋ねられると、一般的には食事を作って下さった方々への感謝だと答える方が多いと思います。もちろん、この感謝の気持ちも含まれていますが、実は真意はもっと深いものです。

本来「いただきます」の前には「いのちを」という言葉が隠されているのです。これを英語にすると「I take your life.」(私は「いのち」を奪う)となり、ストレートでわかりやすくなります。つまり、私たち人間は、動物、野菜、空気の細菌やウイルスを含め、他のいのちの犠牲なくしては生きていけないのです。言い換えれば、私たちはさまざまな「いのち」に支えられて「生かされている」のです。

この意味を踏まえると、まず「いただきます」と口にして思うべきことは、「申しわけない」という他のいのちへの懺悔(ざんげ)なのです。すると自ずと頭が下がります。そして、そこから感謝が生まれてくるのです。ですから、一案として英訳は「I am so sorry for taking your life and am greatly appreciate to be able to have your life.」(あなたのいのちを奪ってしまい、申し訳ありません。有難くいのちを頂戴いたします。)と表現できると思います。

次ページ「いただきます」という言葉が作り出された背景
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