真珠湾慰霊訪問にみる安倍外交のしたたかさ 「戦後にケジメ」で政権のレガシー狙う
日本の首相では、終戦後間もない1951年9月に当時の吉田茂首相が真珠湾に立ち寄ったとの記録が残っており、首相の同地訪問は2人目となる。この点について外務省関係者は「当時の詳細な記録が残っていないが、正確に言えば『真珠湾のアリゾナ記念館を訪問して慰霊するのは初めて』のはずだ」と指摘する。オバマ大統領は"真珠湾メモリアルデー"の12月7日に声明を出し、アリゾナ記念館を首相と一緒に訪問することについて「待ち望んでいる」と歓迎の意を示すとともに「この歴史的訪問は(日米両国が)世界の平和と安全のために手を携えていく証になる」などと意義を強調した。
トランプ氏が当選したことも、決断を後押し
首相にとって真珠湾慰霊訪問は4年前の第2次安倍政権発足以来の「宿題」(周辺)として実現への模索が続いてきた。首相は5日夜のインタビューで昨年の米国議会での演説時から「真珠湾訪問の意義や和解の重要性について発信したいとずっと考えてきた」と語った。さらに、オバマ大統領との最後の日米首脳会談についても「11月20日のリマでの会談で、『12月に会談を行おう。その際に2人で真珠湾を訪問しよう』と確認し、合意した」と明かした。
首相の真珠湾訪問については今年5月のオバマ大統領の広島訪問の際も外交関係者の間で取りざたされた。しかし、一般人も含めた無差別攻撃であるという原爆投下との"違い"から、首相も表面的には「広島訪問の返礼ではない」(側近)との姿勢を堅持してきた。首相と思想・信条が共通する国内保守派に「謝罪外交」と批判されることへの懸念もあったからだ。
しかし、11月の米国大統領選で日米安保条約の見直しなどにも言及してきたドナルド・トランプ氏が当選し、来年1月20日に大統領に就任することも首相の背中を押し、「最後のチャンス」(外務省幹部)として慰霊訪問を決断した。首相は慰霊訪問の後、現地から「世界に向けてのメッセージ」を発信する予定だ。これは「広島訪問時のオバマ大統領のメッセージと対をなすもの」(官邸関係者)でもあり、昨年の首相の米国議会演説と同様に手練れのスピーチライターらによる草稿づくりが進んでいるとされる。
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