インド「高速鉄道」の裏で、もう一つの提案 「在来線の準高速化」は日本の得意分野か

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インドの鉄道事業のカギを握るシンディア議員(写真:記者撮影)

シンディア議員は商工業大臣や電力大臣を務めた大物政治家。そしてシンディア議員の父は1980年代に鉄道大臣としてインドで初めて高速鉄道の導入を提案した“新幹線の父”ともいえる存在だ。それだけにシンディア議員の発言が決して軽はずみなものではないことは確かだ。

準高速鉄道は中速鉄道とも呼ばれる。インドの中速鉄道計画とは、橋梁の強化や急カーブ区間の改修、信号システムの改良などの投資を行ない、在来線でも時速160~200キロメートルで走れるようにすることだ。時速300キロメートルで走る高速鉄道と比べて目的地への到達時間は延びるものの、建設コストは格段に安くなる。「ゼロから高速新線を建設すれば1キロメートル当たり3000万ドルの建設費がかかるが、在来線のアップグレードなら1キロメートル当たり200万ドルで済む」(シンディア議員)。今年4月には最高時速160キロメートルで走るインド初の準高速列車「ガティマン・エクスプレス」がニューデリー―アグラ間で運行を開始した。

「3年半あれば総延長6500~7000キロメートルの在来線を準高速化できる」とシンディア議員は言う。準高速化に1キロメートル当たり200万ドルかかるとすれば総額およそ140億ドル。決して安くはないが、資金面の問題さえクリアできれば、インド経済へのメリットは計り知れない。

世界では「中速鉄道化」が進む

「“中速鉄道化”は世界の流れ」と鉄道技術に詳しい工学院大学の曽根悟特任教授は言い切る。中国やドイツなど、コストの安さから中速化に踏み切る鉄道会社が世界で増えている。仏アルストムや中国中車といった大手車両メーカーは、最高時速200キロメートル程度の中速車両を開発している。

では、日本はこうした中速鉄道化の流れに乗り、世界でビジネスを展開することができるのだろうか。山形新幹線E3系や秋田新幹線E6系は新幹線区間では高速で走れることに加え、在来線区間では急勾配走行や急曲線での走行性能も持ち合わせる。中速列車を造ることに問題はなさそうだ。しかし、曽根特任教授は「技術的には問題ないが、国内で中速鉄道の実績が乏しいのがネックになる」と言う。いま日本国内を時速160キロメートルで走っている中速鉄道といえば成田スカイアクセス線くらいしかない。世界のライバルとの競争上、国内実績を持ち出されたら日本の勝ち目は薄い。

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