インド「高速鉄道」の裏で、もう一つの提案 「在来線の準高速化」は日本の得意分野か

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「日本の鉄道車両は国際競争力が高い」とよく言われるがはたして本当か。鉄道の海外展開がテレビや新聞で報じられる場合、鉄道車両にフォーカスされることが多く、鉄道車両に国際競争力があると思われがちだが、それは一面の見方にすぎない。新幹線はトンネル内や山あいを無理なく走るように設計されており、延々と続く大地を走ることを目的とした海外の高速列車と比べれば価格が割高だ。貨物列車はスケールメリットの点で外国勢に太刀打ちできない。

だとしたら、国際競争力の高い鉄道として、残るのは都市鉄道しかない。人口が爆発的に増えるアジアの国々で都市鉄道の需要はどんどん膨らんでいく。ただし、通勤電車の車両は構造がシンプルなゆえに世界中の車両メーカーが参入している。日本はどうやってそこへ割って入るか。円借款に頼るのも一つの方法だが、技術立国ニッポンとしては少々情けない。

世界に誇れる京急や阪神のダイヤ

京急の運行ダイヤは世界でも例を見ない(撮影:尾形文繁)

日本の大都市圏を走る通勤電車の強みは車両だけでなく、運行システムそのものにあることは日本人なら誰もが知っている。とくに「路線の駅数が多いにもかかわらず、速達列車(主要な駅だけに停車する列車)のスピードが速い京急、阪神のダイヤパターンは世界にも例がない」と曽根特任教授は言う。

たとえば品川―横浜間では京急本線の駅数は23あるが、快特に乗れば駅数が1しかないJR東海道線と所要時間はほぼ同じだ。ダイヤを工夫して各駅停車と特急列車を両立させている。駅数を少なくしてその間をバスでつなぐという方法もあるが、駅を増やして利用者をこまめに集めるほうがバスよりも時間的信頼性が高まり、都市環境にも貢献する。「このようなダイヤを世界に売り込むことができれば、車両やインフラも同時に売れる」と曽根特任教授は期待する。

つまり日本の鉄道車両を海外に売り込むためには車両メーカーだけでなく、JRや私鉄のような鉄道事業者の参加も欠かせない。JR東日本や東京メトロのように運行業務の海外展開を狙う鉄道事業者もあるが、まだ少数派だ。日本では車両メーカーと鉄道事業者が一体となって車両を開発してきたという歴史がある。だとしたら、鉄道ビジネスの海外展開においても鉄道事業者の役割は限りなく大きい。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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