ゴルフ・松山英樹が来年握るドライバーは? ダンロップ「スリクソン」の看板選手に異変

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契約の対象は10本だったり、11本だったりするケースが多いようだが、その理由は案外、納得しやすいものである。たとえばパターやフェアウェイウッドなどまで入れて、14本すべてを契約したとしよう。14本を契約したメーカーの製品がその選手にどうしても合わず、成績が落ち込んでしまったら、選手にも契約先のメーカーにもメリットがない。

だから、14本すべてではなく、少し遊びを持たせているのである。しかし、そうは言っても、ドライバーはメーカーの"顔"と、しばしば評されるだけに、使用対象として契約に入れる場合が多いとも聞く。今回の松山のケースは珍しいものだろう。

すでに述べたように、松山の使うドライバーは、キャロウェイゴルフで販売がすでに終了したモデルである。契約外の選手で、しかも世界で指折りの実力がある松山英樹が使っている。このことが、一般ゴルファーの購買意欲を刺激したのだろう。販売終了モデルのため、セールで価格が安くなっていたことも人気に火がついた要因だった。キャロウェイゴルフにとっては、販売が終わったモデルのために売り上げ増にはすぐに結び付かないが、自社の技術力のアピールにはなった。

ダンロップスポーツにとって、自社のドライバーを使用してもらうことは来年の課題だ。プロの要望に合わせていかにドライバーをフィッティングしていくか、現在使用しているクラブの情報と合わせて対応することになる。

選手とゴルフ用具メーカーの関係性の変化

ダンロップスポーツにとって、松山にドライバーを使ってもらうための努力は大切だ。しかし、一方ではゴルフ用具をめぐるビジネスで、大きなトレンドが動いてきていることも事実だ。いずれかのメーカーと契約した選手が、その商品を使うことは言ってみれば当たり前でもあり、消費者である一般ゴルファーの購買意欲に、かつてほどには響かなくなってきている。ブランド訴求にはつながるかもしれないが、商品の売り上げを左右する要因にはなりにくくなってきているのだ。

メーカーにとっても、従来のプロの使い方やマーケティング戦略を見直す時期かもしれない。プロも自分に合ったクラブを自身で選び、メーカーとのクラブ契約そのものをしないような形態になってくる可能性がある。実際に、今年の賞金王になった池田勇太はクラブ契約がなく、いろいろなメーカーのクラブを自由に組み合わせて使用している。池田のほかには、選手会長の宮里優作も同じ方法を採っている。

クラブではないが、試合に1年以上のブランクから復活したタイガー・ウッズが使用していたボールは「ブリヂストン」ブランドのものだった。ただ、ブリヂストンスポーツによると、使用契約は結んでいないとのこと。ウッズが、契約とは関係なく選んだようだ。

「グレートビッグバーサ」の人気は、商品にまつわるストーリーがあり、価格が手頃であれば、クラブが売れないと言われる今の時代でも、まだまだ消費者心理を動かす可能性があることを示している。モノづくり、マーケティングに携わる者に希望を与える話ではあるが、一方では従来の手法に頼っていては、なかなか売れ行きに直結しないことも示唆しているのかもしれない。

来年、松山英樹が使用するドライバーに注目だ。特にメジャー大会で、どのドライバーを使ってコースを攻略するか。プレーとともに、用具にまつわるストーリーを追うのもまた、ゴルフファンにとっての楽しみに違いない。

嶋崎 平人 ゴルフライター

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しまさき ひらと / Hirato Shimasaki

1976年ブリヂストン入社。1993年からブリヂストンスポーツでクラブ・ボールの企画開発、広報・宣伝・プロ・トーナメント運営等を担当、退職後、ライターのほか多方面からゴルフ活性化活動を継続。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。

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