バイクやドローンが活躍する「鉄道復旧訓練」 現地取材でわかった「イメトレ」の重要性
なぜ両者とも震度6弱想定か。東京メトロは「震度4以上で全列車をいったん緊急停止、5弱以上だと、引き続き運転見合わせ、技術係による線路周辺の歩行点検を行う。5弱以上で最悪の事態と想定しているから」と説明する。西武鉄道は「震度6以上で、当社の全役員および従業員がその後に発令される非常招集を想定し自主的に行動を開始するという社内規定に準じた想定」という。つまり、訓練を必要とするレベルの地震が「震度6」程度ということになる。
地震発生直後に運転司令から地震の「発報指令(緊急地震速報)」が列車に入り、その直後、列車とクルマが衝突。車内に負傷者が発生し、この現場近くで線路が陥没。列車が立ち往生した……などの想定から、訓練では人事部などによる自動メール送信(災害時安否報告訓練)や、社長が本社事務局(管理部)へ被害者支援室の設置を指示するという訓練も実施した。
消防・警察・鉄道の“動き”の共有
閉ざされた地下空間で地震が起きたという想定の東京メトロと、地上での踏切衝突事故や線路陥没が起きたという想定の西武。地下と地上という事故発生場所の違いは、訓練の内容を大きく変える。たとえば、“新兵器”の活用だ。東京メトロは14台保有するモトクロスバイク(ヤマハ「セロー250」)や緊急自動車などを事故現場へ向かわせるなどのデモを実施した。いっぽうの西武は、ドローンを飛ばし、上空から事故現場の状況を確認。大型保線機械「レールスター」やクレーン軌陸車を現場へ向かわせ線路復旧までの手順を確認した。地下と地上という異なる空間で垣間見えた“アプローチ”の違いだ。
もちろん、誰が現場を統括し、どう動くかといった確認は、両社に共通している。東京メトロと西武の双方に「警察、消防、鉄道と、少なくとも三者が現場に居合わせているが、どこが統括して指示を出しているのか」と聞くと、両社とも、「現場の状況にあわせて柔軟に」という回答が返ってきた。東京メトロの担当者は、「現場付近に設置した現地対策本部が中心となり、本部長が陣頭指揮をとるが、基本的には鉄道職員、消防、警察の上下関係・主従関係はない。フラットな立ち位置で連携し救護・復旧に取り組む」と説明する。
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