セルジオ越後、本田のスタメン外しを斬る! 日本代表のスタメンであるために必要なこと

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いくら名門クラブに所属していても、そこでベンチを温めていてはダメ。ケルンやヘルタといった中堅クラブで毎週末、試合に出て激しく戦い、レベルアップする。それこそが何よりも成長、飛躍につながるということを、大迫と原口はあらためて証明してくれました。

試合に出るという点では、ドイツのハノーファーに移籍して、わずか半年でセレッソに復帰した山口の決断も、僕は評価します。あのままドイツに残って新シーズンを迎えても試合には出られないかもしれない。それならJリーグに復帰して試合に出て、成長したほうがいい。実際、山口はセレッソで試合に出てチームをJ1復帰へと導き、日本代表でも好パフォーマンスを発揮してポジションをがっちりつかんでいますから。

一方、清武に関しては、評価が難しいです。彼がすばらしい才能の持ち主だということはわかっているし、サウジアラビア戦で好パフォーマンスを見せたのも間違いないです。

ただ、今シーズンから加入したセビージャでは試合にあまり出られていないので、今後も安定したパフォーマンスを見せられるのかどうか不透明です。実際、(サウジアラビア戦の4日前に行われた)オマーンとの親善試合もサウジアラビア戦も途中交代しています。本人にとって不本意かもしれませんが、冬のマーケットで試合に出られるチームに移籍したほうがいいと思います。

「まずは所属チームの試合にしっかり出ることが大事だ」

――ヨーロッパで試合に出ていない選手たちに対して、ハリルホジッチ監督は「先発を取りなさい。もしくは先発を取れるチームに移籍しなさい」と言ったそうですが、日本代表の選考基準として「所属クラブで試合に出ること」という当たり前のことが再確認されましたね。

そうなんです。ACミランだとか、ドルトムントだとか、ビッグクラブの看板なんて関係ないんです。重要なのは、どこに所属しているかではなく、何ができるか、です。サウジアラビア戦の前、本田は「スタメンから外すなら、理由を説明する義務がある」と言いましたが、理由は単純明快で、試合に出ていないからです。

本田は「日本代表ではこれまで力で道を切り開いてきた」とも言いました。それは否定しませんが、「これまで」の話であって、今後もポジションが安泰なはずがありません。彼自身、2010年の南アフリカ・ワールドカップの前に、これまで力で道を切り開いてきた中村俊輔(横浜F・マリノス)に挑戦状をたたきつけて、ポジションを奪ったはずです。そのことを忘れてしまったのでしょうか。まずは所属チームで結果を残す。日本代表でプレーするのは、それからです。

――岡崎は今、レスターで出場機会を取り戻し、調子を上げてきています。本田も香川も所属クラブで活躍するか、出番の得られるクラブに移籍してパフォーマンスを取り戻せば、まだまだ日本代表でプレーするチャンスがあるということですね。

もちろんです。今回の活躍だけで大迫、原口、清武が不動のレギュラーになってしまったら、同じ過ちを繰り返すことになります。だから、本田と香川が早くトップパフォーマンスを取り戻して、再び日本代表を牽引するぐらいの存在感を発揮してほしいと思います。そのときこそ、代表チームに激しい競争が持ち込まれ、より高いレベルの集団になるのではないでしょうか。

アジア最終予選は2位で前半戦を終えましたが、来年にはアウェーのUAE戦(2017年3月23日)、アウェーのイラク戦(2017年6月13日/イランでの代替開催を予定)、アウェーのサウジアラビ戦(2017年9月5日)が残っていて、前半戦より厳しい戦いが待っています。

今回は、マレーシアのジョホールバルでイランを下して初めて突破した1998年のフランス・ワールドカップの最終予選以来の苦しい予選になると思われます。ですから、大迫、原口、清武、山口らロンドン五輪世代の一層の成長と、本田、香川、岡崎ら、これまで代表チームを牽引してきた選手たちの巻き返しに期待したいと思います。

飯尾 篤史 スポーツライター

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いいお あつし / Atsushi Iio

東京都出身。明治大学卒業後、サッカー専門誌の編集記者を経て2012年からフリーランスに転身、スポーツライターとして活躍中。『Number』『サッカーダイジェスト』『サッカーマガジン』などの各誌に執筆。著書に『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成に岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(ベスト新書)などがある。

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