「おかげさまで」の根っこにある日本人の精神

ご縁の重なりが「今」をつくり、未来へ繋がる

おかげさまでの精神の裏側にあるのは?(写真:hanack / PIXTA)
浄土真宗本願寺派僧侶でありながら、通訳や翻訳も手掛ける大來尚順氏による連載『訳せない日本語~日本人の言葉と心~』。エンターテインメントコンテンツのポータルサイト「アルファポリス」とのコラボによりお届けする。

「胸に詰まってしまっている言葉」

「お元気にされていますか?」「ご家族の皆さまはお元気ですか?」と尋ねられると、私はいつも「おかげさまで元気にしています」と返答します。きっと、多くの方が謙虚な姿勢を表す言葉として、何気なく使う言葉の一つだと思います。しかし、実は私は通訳や翻訳の仕事をしている中で、最も困る言葉がこの「おかげさまで」なのです。この理由には、ちょっとしたエピソードがあります。

アルファポリスビジネス(運営:アルファポリス)の提供記事です

大学4年の夏、海外で浄土真宗を学ぶプログラムに参加し、ハワイで研修していたときのことです。「なぜハワイ?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、実はハワイにはたくさんの日本の仏教寺院があります。まだ日本が経済的に豊かではなかった20世紀初頭、日本から多くの方がハワイ、北米、南米へ出稼ぎに行き、移民として現地に移住するようになりました。

当時、現地では日本人に対するさまざまな差別意識が持たれ、農業や商売をするにしても大変な苦労をされたそうです。そのような人々の心の支えとなったのが、お寺の存在でした。外国に移住した人たちは結束力を固め、まとまった集落を作り、その集落の中心に日本の仏教寺院様式を真似たお寺を建てました。どんなに辛いことがあっても、遠く離れてはいるけれども、馴染み深い日本のお寺の中や仏さまの前では皆平等であるという支えによって、辛い日々の暮らしを乗り越えておられたそうです。

こうして建立されたお寺は今でも北米、南米に残っており、日系人と呼ばれる移住された子孫の方々や新たに信仰者となった現地の人々によって大切に守られています。その原点とも言われる場所がハワイであり、海外で浄土真宗を学ぶことは私にとって大変重要な意味を持っていたのです。

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