おカネは「袋分け」に管理しないほうが良い 「目的別」に資産運用するとカモられるかも

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これらの多くは金融商品を販売せんがために金融機関が考え出した「ストーリー戦略」であり、単なるフィクションと考えたほうがいいでしょう。お客さんにとってはそのほうがわかりやすいし、セールスしやすいから考え出された戦略です。

そもそも「○○向けの商品」などというものは金融商品に限って言えばあまり合理的ではありません。それにそういう類の商品は往々にして手数料が高いというのもありがちなことです。

資産運用で資金を小分けするのは非合理的かつ非効率

おカネの良いところは、持っていれば使い道は後から自由に決めることができるということにあります。また資産運用でおカネを増やそうと思うとリスクは取らざるをえませんから、人それぞれに自分でリスクを取れる分だけリスク商品を保有し、あとは無リスク商品(預金や現金)で持っていればいいのです。したがって、資産運用にあたって資金を小分けするというのは非合理的ですし、極めて非効率です。

もちろん、分けるのがいけないと言っても、分散投資を否定するわけではありません。投資対象としてリスクリターンの異なる金融資産におカネを分散することはとても重要です。ここでいう“小分け”は分散投資のことを言っているのではなく、「使う目的別におカネを管理して増やしましょう」というのが合理的ではないと言っているのです。

資産運用というのは金額が増えれば増えるほど、運用の選択肢は広がりますし、場合によっては運用コストも低くすることができます。ところが運用原資を小分けしてしまうことは、運用手段を狭めてしまうことになってしまいますし、十分な分散投資ができないということにもなりかねません。

それに、おカネを貯めたり運用したりする段階から目的を念頭においたとしても、往々にして生活設計やライフプランというものは変わります。予定外の出費や想定していた資金が必要でなくなるということだって、しばしばあります。だとすれば目的限定の貯め方をしたり、金融商品を買ったりするのではなく、汎用的に使えるようまとめて運用しておき、必要な時にはそこから必要な金額だけ引き出すほうがずっと合理的だと言えます。

おカネの袋分けというのは一見良い方法に見えるかもしれませんが、支出であればともかく、おカネを増やすことを考えた場合は決してやってはいけないということを知っておいてください。

大江 英樹 経済コラムニスト、オフィス・リベルタス代表

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おおえ ひでき / Hideki Oe

大手証券会社で25年間にわたって個人の資産運用業務に従事。確定拠出年金ビジネスに携わってきた業界の草分け的存在。日本での導入第1号であるすかいらーくや、トヨタ自動車などの導入にあたりコンサルティングを担当。2003年から大手証券グループの確定拠出年金部長などを務める。独立後は「サラリーマンが退職後、幸せな生活を送れるよう支援する」という信念のもと、経済やおカネの知識を伝える活動を行う。CFP、日本証券アナリスト協会検定会員。主な著書に『自分で年金をつくる最高の方法』(日本地域社会研究所)、『知らないと損する 経済とおかねの超基本1年生』(東洋経済新報社)などがある。

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