「認知症患者の行動」家族が背負う責任の重さ 法的問題と加害者になるのを防ぐのは別問題

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責任のあるなしは、生活状況の詳細を明らかにしないとわからない。法的な責任の所在があいまいであるということは、当事者にとってはとても難しい状況に置かれることを意味する。

被害にあってしまった場合、もちろん加害者がどのような生活をしていたのかということはわかるわけもなく、誰に責任の追及ができるのか、自ら調査し争っていかなければならない。一方、加害者となってしまった家族にとっても、どこまでのことをやっておけば自分たちの責任が免除されることになるかわからない。

一度事故が起こってしまうと、通常の交通事故とは違った困難な問題が待ち受けているのだ。もちろん、いちばんは事故を未然に防ぐことである。

家族だけで抱え込むことはない

自動車の運転など、他人に危害を加えることが予想される場合、それを取り除くべきだが、家族の間にはさまざまな葛藤があるだろう。車を取り上げればいい、免許を取り上げればいいと言うのは簡単だが、なかなかすんなりいくことではない。

司法書士を務める筆者は、日ごろ、成年後見制度を通して認知症の症状がある方々やその家族と接する機会が多くある。認知症の症状が出ている方でも「自分はできる」と信じているケースは多い。

自分では運転できると信じている方から車や免許を取り上げる行為は、その人の人格を否定するかのような感覚になることがある。家族にとっては、なおさらそれは辛いことだろう。このような状況は、家族だけで抱え込むことはない。

介護というものは、もはや家族だけで何とかする時代ではない。介護保険制度を利用するなかで、ケアマネジャーやヘルパーなど、第三者と一緒に対応を考えるのも一手だ。万事うまく行くということではないが、第三者からの客観的な意見を織り交ぜて本人に粘り強く伝えていくことが有効な時もある。

法的に家族の責任があるかどうかという点を書いてきたが、法的な責任があるかどうかと加害者になることを防ぐことは別問題だ。一度、加害者になってしまえば、責任の有無にかかわらず、その家族にとっても深い傷を残すことになる。

「○○すればうまくいく」という特効薬的な対処法はなかなかないだろうが、悲しい事故をなくすために、ときには第三者の助けを受けながら向き合っていく必要がある。

及川 修平 司法書士

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おいかわ しゅうへい / Syuhei Oikawa

24歳の時に司法書士登録し開業。開業当初より、成年後見制度を利用し、認知症などで判断能力が低下した方のための支援を行ってきた。成年後見人としての業務を行う中で、現在、ニュースでも取り上げられている認知症患者の徘徊の問題にも向き合っている。
 

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