「顧客情報ファイル」を駅で紛失したらクビ? IT企業で働く女性、泥酔してしまい…

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ただし、「紛失等した個人データを、第三者に見られることなく、速やかに回収した場合」には、影響を受ける可能性のある本人への連絡や公表は省略して構わないとされています。今回のケースで、アイコさんが顧客情報の内容を誰にも見られることなく回収したのであれば、ファイルに情報が載っている顧客などへの連絡や公表は必要ないと考えられます。

また、ガイドラインでは、市販されている公務員の職員録のような、誰もが容易に入手できる市販名簿などには上記の対策は必要ないとされています。したがって、アイコさんが持っていた「業者から買った名簿」が、そのようなものであれば、特段の対策は必要ないことになります。

以上から、今回のケースでは、おそらく、会社としては、顧客などへの連絡や公表などを行う必要はなかったと考えられます。

これらを前提にアイコさんの処分の可能性を考えてみます。就業規則や個人情報取扱規程などの内容は会社によって様々ですが、個人情報の漏えいなどを処分の対象にしている会社は多いでしょう。しかし、アイコさんのケースでは、わざと(故意で)漏えいなどをしたわけではありませんし、すぐに取り返していることなどから、処分といっても解雇が相当とまではいえないのが通常だと考えられます。

「むしろ、ファイル紛失を報告しなかったことが問題」

むしろ問題は、アイコさんが個人情報が記載されたファイルを紛失したことを会社に報告しなかった点です。

個人情報が漏えいなどすると、振り込め詐欺などの被害に発展する危険があります。必ず会社に報告し、情報が漏えいした本人への連絡や公表などの対応を、会社が取れるようにしなければいけません。

会社に報告しなかったことについて、就業規則などの定め方によっては厳しい処分もありえると思われますが、それでも今回のようなケースでは、解雇まではできないのが一般的であろうと思われます。

以上から、アイコさんにとっては厳しい処分にならない可能性が高いので、今後もし同様のことが起こった場合は、直ちに会社に報告すべきでしょう。

影島 広泰(かげしま ひろやす)弁護士
03年弁護士登録。ITシステム・ソフトウェアの開発・運用に関する案件、情報管理や利活用、ネット上の紛争案件等に従事。日本経済新聞2015年「企業が選ぶ弁護士ランキング」の情報管理部門で企業が選ぶランキング3位・総合ランキング2位。
事務所名:牛島総合法律事務所

 

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