アドビが「2ケタ成長」を続けられる根本理由 変革を恐れないからこそ進化がある
――ただ、多くの企業にとって業態を変えるなんてとんでもない話で、なんとか現状を維持することに固執しがちです。
はっきり言えるのは、現状維持はビジネス戦略としていいものではないということだ。特にハイテク企業が「何も起こっていないから変わる必要はない」ということであれば、それは自己否定でしかない。アドビはもともと、ポストスクリプトを開発する企業としてスタートして、その後「フォトショップ」など画像加工ソフト分野に参入した。これも大きな変化だった。そこから、PDF開発に乗り出すのも大きな変化だった。そういう意味では、アドビはつねに変革して進化してきた企業だ。
優秀な人材がアドビを選ぶ根拠
――変革するうえで、社員の力が大きかったということですが、いまシリコンバレーでは、能力のある技術者を採用するのは大変だと聞いています。
アドビは「働きたい会社」ランキングで、世界的につねに上位に入っている。われわれのイノベーションを重視する文化を評価して、ベストな人材がアドビを選んでくれるだけではなく、その後ここで自らを成長させながら、キャリアを重ねてくれるのではないか。
われわれには、東京も含めて非常に優良な大学生向けリクルーティングのプログラムがあり、そこから優秀な人材を探すこともやっている。インターンシップなどをやってもらうのだが、彼らはそこでアドビでの仕事が自分に合うかどうか判断できるし、われわれも彼らの能力を見極めることができる。
社員の離職率は、拠点のあるすべての国でとても低い。多くの人は、自分が貢献している、成功していると感じられるところで働きたいはずだ。アドビでは、多くの社員がそれを感じているから、これだけ業績が成長しており、「世界のトップブランド100」に選ばれるほどになっている。大事なのは、人を採用することだけではなく、その人の成長につながるキャリアを作ってあげて、ずっと働き続けてもらうことだ。
――ハイテク業界、それも米国のハイテク業界では転職してステップアップを図るのが、キャリア的に当たり前です。そういう意味では、アドビはずいぶん珍しいですね。
アドビの場合、経営陣も10年以上在籍している人が多い。これはシリコンバレーでは驚くほど長い期間だ。私も19年アドビで働いており、つねに大きなチャンスを与えられてきたと感じている。大きなチャンスというのは、大きなインパクトを与えられる仕事であり、すばらしい仕事でもある。アドビのもうひとつの特徴は、社員の多様性が豊かで、これが独特のカルチャーにつながっていることだろう。
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