「フリーゲージ」開業が間に合わない根本原因 そもそも開発スケジュールに無理はないか

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

調査の結果が公表されたのは2015年12月。車軸や軸受けの磨耗や欠損は、時速260キロメートルでの耐久走行により「新たに確認された事象」によって生じたとされた。その後、さらに分析・調査を進め、2016年には改良を施した台車を室内の試験装置で高速回転させる「室内台車回転試験」などを実施。磨耗対策の効果が検証された。

だが、設計通りの荷重をかけた状態では3万7500キロメートルの回転試験を行っても磨耗は確認されなかったものの、実際の走行時に振動で加わる力を想定し、荷重を1.3倍にした場合では9000キロメートルで磨耗が発生したという。

フリーゲージトレインの台車。赤い部分がスライドして軌間変換を行う

このため、対策には一定の効果はあるものの、実際の線路で60万キロメートルを走行できる耐久性があるとの判断は難しいとされた。また、高速回転する台車に振動を加えて行う「高速走行安定性試験」でも、耐久走行試験を行うにはより詳細な検討が必要との結果が出た。

さらに、経済性についての課題も浮上した。不具合への対応を踏まえ、車軸などを定期的に交換することを想定すると、交換周期を走行距離60万キロメートルとした場合は一般の新幹線の約3倍、240万キロメートルとした場合は2.5倍のコスト増となることが試算で明らかになった。一般の新幹線の場合は、車軸や駆動装置などを計画的に交換することはないという。

耐久走行試験の再開は先送りに

耐久走行試験再開の条件は、車軸の磨耗対策については「60万キロメートル程度の耐久性を有すると認められること」、メンテナンスコストなどについても「一定の水準に収まる見通しが立つこと」などだ。今回の検証結果では、これらの条件は満たされていない。

このため、当初計画されていた耐久走行試験の再開は先送りとし、まず1万キロメートル程度の検証走行試験を実施したうえで、専門家による「軌間可変技術評価委員会」を開き、試験結果の評価を受けた上で耐久走行試験を再開する方針となった。検証走行試験の期間は半年ほどで、来年の初夏には耐久試験が再開できるかどうか、再び「審判」が下ることになる。

次ページもともと厳しかった開発スケジュール
関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事