2分でわかる!「試験英語への洗脳度」テスト なぜ「日本の英語教育」では話せないのか

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ではなぜ、日本の「試験英語」は今のような形になってしまったのでしょうか。

歴史的に見て、日本の英語教育は「何が書かれているのか」を読み解くための手段として始まり、やがて大学入試にも取り込まれていきました。そこで問われるものは「実践で英語を使う」能力ではなく、穴埋め問題に代表される「英語パズルを解く」能力です。

よくも悪くも、大学入試は全国民の意識を方向づける機能を持っています。そのため、難しいパズルを解ける人が「一流大学」に進んで「成功者」となります。逆に、実践で見事に英語を使うことができても、それはかならずしも進学や出世につながりません。

日本の英語の試験は、「英語を使わせないシステム」です。当然のことですが、どの国の人でも、言語は使わなければ使えるようにはなりません。その結果、日本では、難関大学の受験で出題されるような小難しい英語の読解や英語パズルの解読はできても、英語によるコミュニケーションの実践は苦手な人がほとんどです。

料理をいくら食べても、実際に作ってみなければ、シェフになれないどころか家族の晩ご飯すら出せません。同様に、どんなに競泳のレースやシンクロナイズドスイミングを観戦しても、実際に泳いでみなければ、泳げるようにはなりません。

英語も同じです。穴埋め問題を何十年やっても、実践で使える英語を習得することはできません。

TOEICでさらに強化される「試験英語の洗脳」

この「試験英語の洗脳」は、社会人になっても続きます。

1990年代以降は、社員にビジネスで通用する英語力を求める企業も増えました。その過程で、社員の英語力を測定する指標として幅広く使われるようになったのがTOEICです。ご存じのとおり、TOEICは英語の4技能のうち、「聞く」「読む」という受容の力を測るテストです。「書く」「話す」能力は、ここでも考慮されていません。

やはり、多くの企業や受験者にとってTOEICは「スコアありき」のペーパーテストであり続け、「受容のための受容」を再生産し続けています。英語を自分で創り出すのではなく、すでにある選択肢から正解を選ぶだけだからです。

これでは受験英語の延長で、いつまでたっても「英語を使わせないシステム」から脱却することはできません。

ここで、方向転換が必要です。あらゆる単語と文法の豆知識をインプットする「ペーパーテストのための努力」をひとまず脇においてみましょう。ただひたすら正解を選ぶばかりの「試験英語」を追いかけるのをやめ、「実践英語」にトライしてください。そうすれば、あなたは必ずや「英語を使える」ようになるはずです。

スティーブ・ソレイシィ ビジネス・ブレークスルー大学教授

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Steve Soresi

ソレイシィ研究所株式会社代表取締役社長。アメリカン大学(American University)卒業。スピーキングを中心とした実践的な英語コミュニケーションの指導に携わり、2009年に国際言語としての英語の教授法をテーマにした研究で博士号を取得。1999年に始まったNHKテレビ『スティーブ・ソレイシィのはじめよう英会話』で人気を博す。2005年に米国フロリダ州の「TESOL(英語教育学会)」で最優秀論文賞を獲得。2012よりNHKラジオ『英会話タイムトライアル』のメイン講師。代表的な著書に『英会話なるほどフレーズ100』『英会話きちんとフレーズ100』『英会話ペラペラビジネス100』(アルク)、『英会話1000本ノック』『英会話1000本ノック<ビジネス編>』(コスモピア)、『英会話ピッタリ表現でぃくしょなりぃ』(語研)などがある。

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