ここでのチケットの中心価格帯は15ポンド(2000円強)~20ポンドだ。子供はその半額に設定されており、「家族総出」で出かけるのに十分に手が届く価格設定だ。筆者もスタジアムで観戦したのだが、小・中学生の子供を連れた家族がとても多かった。
日本ではテストマッチでも「自由席」の設定があるが、カーディフをはじめとする英国の代表戦では、すべての座席が「指定席」となっている。入場希望者があまりに多く、不必要な空席を作ってはもったいないと「最後の1席」まで売り尽くすための措置だ。
サッカープレミアリーグのスタジアムでも同様の方針が取られている。日本のサポーターたちは先のアルゼンチン戦でも、自由席エリアで良い席を取るために早い時間から並んだりしていたが、英国ではそんな手間は不要。試合開始の直前までスタジアムの外にあるパブでビールを飲み交わすことができる。
見習いたい「サポーターの囲い込み」
ウェールズ戦には日本からも多くの「個人観戦客」が訪れた。チケットを現地のウェールズ協会から入手したサポーターのもとには、当日にスタジアムを訪れる際の注意事項のほか、観戦に役立つスタジアムでの楽しみ方などが詳細に書かれたメールが届けられた。
さらに、一度でもチケットを入手すると、そのサポーターのメールアドレスが協会のデータベースに記録されるので、別の試合に関する案内も来るようになる。協会側でも個々のサポーターたちがどこの地方・国から観戦に来ているのかをしっかり把握できる。ウェールズ協会が「今回、満席になった日本戦を来年もやるかどうか」を決める際に、これらのデータが役に立つことは間違いない。
今回の「カーディフでの日本戦」は、ウェールズ協会にとって興行的にも大成功を収めた。
問題は日本協会だ。数万人のラグビーサポーターが集まる機会だったにもかかわらず、試合会場内外のどこにもW杯日本開催のPRがなかったのは残念だった。W杯日本開催の盛り上げに向け、国内での機運醸成は必須だが、海外からの誘客活動の強化も課題だろう。
これまで日本で開催されたテストマッチでは、海外から試合観戦のために訪れるサポーターは多くない。それだけに、こういう機会を使って積極的に日本をアピールするべきだろう。
ウェールズ人に限らず、英国のラグビーファンと話をすると、いまもなお「ジャパンの活躍」を賞賛する声がやまない。強豪国のサポーターの間でも、ラグビー日本代表やW杯日本大会への期待は決して小さくない。大会運営に携わる人々は国内のことばかりを気にしがちだが、外国のサポーターと生で接触する機会を増やし、彼らを1人でも多く招くことを考えたほうがいいかもしれない。
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