三浦惺・NTT社長インタビュー「2010年グループ再編問題では建設的な議論をしたい」

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私自身、外資系トップの方々に会うと「NTT(通信回線)の品質はいいね」と言っていただけることが多い。2006年末に起きた台湾沖地震では復旧の速さを評価された。サービスメニューだけでなくこうしたアフターケアを含めた保守での信用を高めていくことが重要だと考えている。

--3月末に商用化を開始した次世代ネットワーク(NGN)の手応えは?

新しいルータやサーバを入れていくのに時間がかかることもあり、スモールスタートで確認しながら広げている。少なくともエリア展開は予定通りで、夏から秋からにかけてかなり広がっていく。サービスでは地デジ再送信が東京、大阪でスタートしたしSaaS(software as a service)でも連携していく。ベンチャー企業ngiグループの3次元技術にも出資した。法人ユーザーからはイーサネットが注目されているし手応えを感じている。

今のIPネットワークは東西でバラバラだったし、これを続けていくとおそろしいコストになる。しかも保守やサービスの面でも問題を抱え、NGNは早晩やらなければいけないもの。単にコスト面の課題を克服するだけでなく、これからの新しいサービスを創っていく基盤でもある。

将来的には、売上高に占める設備投資の比率を下げていこうとしている。ほかのキャリアに比べると、われわれは光回線やドコモの3GやNGNなど、これまでインフラ投資に多くをつぎこんできた。しかしドコモの投資はピークアウトしたし、固定網もここ3年をすぎればインフラ投資が一巡する。そうすれば、投資の比重はサービス開発に移り、収入に連動した設備投資になっていく。設備投資の効率的な投下に注力していくつもりだ。

--法人向けはともかく、個人向けサービスに弱い印象があるが。

我々もサービスを考えていくが、これについては”オープンとコラボレーション”が大切で、他社との連携は当然だと考えている。韓国KT社と上位レイヤーで連携しているのもその一例で、映像中心にいろいろな事例が出てくるだろう。映像は権利関係が複雑という問題があるが、いろいろなところで議論が活発になるなど前進はしている。ユーザーニーズに応えるものは、時間が多少かかるとはいえ早晩実現するもの。悲観はしていない。

--2010年にはNTTの組織問題が検討されることになっている。

今の基本的な枠組みを前提として、新しい融合サービスを提供できるのかできないのかやってみる。できないのであれば、われわれも2010年を待たずに規制緩和を要求していかないといけない。組織の議論となると、やれ1つがいい、とか、大きいから分けろ、とか、空中戦のようになってしまうが、建設的な議論をしたい。空中戦はNTTにとっても不幸だし、通信業界、ひいては日本にとっても好ましくない。中身の議論をしてもらったうえで組織の話をしたい。逃げているわけでない。

現在グループ会社は約450社。業務フローを見直しシステム関係も統一していくとか、ミッションが重複するところは集約するなど、絶えず見直していかないといけない。従来の合理化は人減らしという意味合いが強かったが、いまのサービスやネットワークは複雑化しており、人の手間もかかる。合理化は企業の永遠の課題であり、やりかたや中身は常に変わっていく。私はサービス向上に結びつく合理化がいちばん大事だと考えている。

(撮影:尾形文繁=東洋経済オンライン)

プロフィール●みうら さとし
1944年生まれ、広島県出身。67年東京大学卒業、電電公社入社。96年NTT取締役人事労働部長、02年NTT東日本社長、05年NTT副社長を経て、07年社長就任。

高橋 志津子 東洋経済 記者

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たかはし しづこ / Shizuko Takahashi

上智大学法学部国際関係法学科卒。東洋経済新報社に入社後は、会社四季報、週刊東洋経済、ムック、東洋経済オンラインなどさまざまな媒体で編集・執筆を手掛ける

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