今度は「ジャズ」、京急イベント電車の狙い 水着ショー、ビールに続くのは音楽ライブ

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そして第3弾となる今回は、前回と同様の3部制だが、定員を240人へとさらに拡大した。また、前回は走る電車内でのライブだったが、今回は初回と同じく停車中の電車内でのライブに変更した。その理由について、「今年、京急川崎駅にショッピングセンターのウィング川崎がオープンして駅周辺に人が増えた。電車内ライブの様子は外からも見えるので、面白いことをやっていると知っていただきい」と京急側は説明している。

今回参加したアーティストは、「ブラック・ボトム・ブラス・バンド(BBBB)」。関西で結成されたニューオーリンズスタイルのジャズバンドで、フジロックフェスティバルや台中ジャズフェスティバルなど国内外の野外フェスで活躍している。2014年、2015年は複数のアーティストが交代で出演したが、今回はBBBBが3部全てでライブ。演目は「マル秘」。当日の雰囲気、お客さんのノリを見ながら即興で曲目を考えるため、主催者側もどんな曲が飛び出すかわからなかったそうだ。

240人分の席はあっという間に完売し、11月5日のライブ当日を迎えた。第1部の開演は16時だが、30分前には多くのファンが列を作っていた。会場は4両編成のうち2両が客席として使われる。電車のドアが開くとファンたちは整然と乗車。駅ホームではアルコールなどのドリンク類も売られている。ライブハウス同様、ドリンクを楽しみながら音楽を聴くことができる趣向だ。

本当の狙いは地域貢献

演奏を行なったブラック・ボトム・ブラス・バンドのメンバー

16時の開演と同時に7人で構成されるBBBBのメンバーが車内に乗り込んできた。歩きながら楽器を演奏し、オリジナル曲「ワッショイ・ブギ」では観客といっしょに「ワッショイ、ワッショイ」と連呼。止まっているはずの列車が、観客の「ワッショイ」のかけ声に合わせて揺れるほどの迫力だ。

スウィング・ジャズの定番曲「Sing Sing Sing」が演奏されると自然に手拍子が起きた。車内には川崎市の福田紀彦市長の姿もあり、「電車の中でのライブはモントルーにないかもしれないね」と大満足の表情で語った。

それにしても京急は、水着ファッションショー列車にビール電車と、なぜ次々とイベント列車を繰り出すのだろうか。「面白いから」という理由はもちろんあるだろうが、それだけでは人は集まらない。それぞれのイベント列車の仕掛けをよく考えてみると本当の狙いが見えてくる。

大手水着メーカーと組んで7月31日に運行した水着ファッションショー列車。その最終目的地は三浦海岸だった。これは三浦海岸に若い女性を呼び込むという狙いがある。

10月14日に運行したビール電車はキリンビール横浜工場の90周年を記念して、キリンビールが京急に提案して運行が決まった。横浜工場の最寄り駅は京急の生麦駅という関係がある。

そして今回の電車ライブは、かわさきジャズの一環として開催された。つまり、これらのイベントは地域との結びつきを重視して開催されているということがよくわかる。

京急では長期経営計画で「沿線の魅力向上を通じた賑わいの創出」を掲げている。沿線の賑わいとは直接的には鉄道運行の利便性拡大や不動産・流通事業の強化によってもたらされるものかもしれないが、イベント列車という方法もまた、地域貢献の手段の一つである。川崎、横浜、三浦海岸と続いたイベント列車による地域貢献。次のイベントはどこでどのように行なわれるかが楽しみだ。

(撮影:尾形文繁)

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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