視覚障害者にとって駅ホームは危険だらけだ 見える人にはわからない問題や不安

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だが、この際にちょっとでも方向が狂ってしまうと、現在位置をつかむ手がかりがなくなってしまうという。別の女性は「ちょっとした加減で斜めに進んでしまうと、点字ブロックに行けども行けどもぶつからない。電車がホームに停まっていることはわかるのにドアにたどりつけず、怖くて1本やり過ごしたことがある」と話す。慣れている駅であっても、方向感覚を失ってしまうとどちら側が線路か分からなくなってしまうのだ。

また、点字ブロックが柱で遮られていたり、上に荷物が置かれていたりすれば、これらを避けた際に方向がわからなくなってしまうという。転落事故が発生しやすいのはこのような場合だ。

全日本視覚障害者協議会の山城完治・総務担当理事は「見える人がなぜホームから落ちないかというと、ホームの端がどこかを視覚で認識して、自分の中で『壁』をつくっているから。だが視覚障害者にはそれができないので、ちょっとした方向のミスで落ちてしまう危険がある」と指摘する。

では、その際に有効な対策は何だろうか。もっとも有効なのは、物理的に転落を防ぐホームドア(可動式ホーム柵)だが、より早期に整備が可能な手段として視覚障害者から有効性を指摘する声が多かったのは、駅員などによる声かけと、現在整備が進む「内方線付き点字ブロック」だ。

効果の大きい「内方線」

ホームの内側がどちらかを示す「内方線」が設置された点字ブロック(写真:shu / PIXTA)

内方線付き点字ブロックとは、ホームの内側寄りに線状の突起(内方線)があるブロック。この線があれば、杖や足でどちら側がホームの内側なのかを把握できる。

電車に乗る際、足を踏み外してホームと車両の間に落ちたことがあるという女性は「内方線があれば線路側に行きすぎることはなくなる」と評価する。方向感覚を失った際のガイドとしては効果が大きいようだ。だが、この女性の最寄り駅にはまだ内方線付き点字ブロックは設置されていないという。

国交省の2015年度のデータによると、1日あたりの平均利用者数が10万人を超える駅での整備状況は、全国の地下鉄で設置が完了しているほか、大手私鉄15社のうち12社、JR旅客6社のうち4社が100%整備済みとなっている。だが、平均利用者が1日1万人以上の駅となると、整備率は76.9%に留まる。ホームドアなどに比べれば低コストで整備可能なだけに、さらなる普及が望まれる。

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