視覚障害者にとって駅ホームは危険だらけだ 見える人にはわからない問題や不安

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ホームドア(可動式ホーム柵)の研究開発や設置も進みつつある。京急電鉄三浦海岸駅で実証実験を行っている「マルチドア対応ホームドア」

だが、山城氏は「確かに内方線付きブロックは方向がわからなくなった時に効果が大きいが、常に杖や足で確認できるわけではない」と指摘する。

そこで有効な対策として考えられるのが、駅員などによる「声かけ」だ。しかし、視覚障害者の立場からすると、単に声をかけられるだけでは逆に危ないこともあるという。声をかけられて振り向くことで、方向感覚を失ってしまうことがあるためだ。

前出の男性によると「『危ないですよ』とか『下がってください』と言われても、目が見えないと誰が危ないのか、どちらに下がればいいか分からない。『そこの杖を持った人、危ないから止まれ』などと具体的に言ってくれたほうがわかりやすい」という。別の視覚障害者の男性も「声をかけるだけでなく、杖や肩などに触れてもらえるとわかりやすい」と語る。

山城氏は、緊急の安全対策として転落などの危険性が高い箇所に駅員を配置し、視覚障害者に対して声をかけるだけでなく、階段や車両のドアなどまで一緒に誘導してもらえるような体制を整えてもらうことがもっとも望ましいという。

ホームの危険箇所、実態調査を

そのためには、どの駅ホームが視覚障害者にとって危険かをまず調査することが重要だ。8月の青山一丁目駅での事故を受けて国土交通省が設置した「駅ホームにおける安全性向上のための検討会」でも安全対策が検討されているが、転落防止に向けた方策は今ひとつはっきりしない。

山城氏は「視覚障害者の転落事故が複数回起きている駅もある。そういった駅を最優先に、どのような動線で転落事故が起きているのか、まずは危険箇所を徹底的に洗い出してほしい」と強調する。

都心部でも、混雑や柱の位置などの問題で転落しやすい駅はもちろん、点字ブロックをそのままたどっていくと柱にぶつかるといった駅も決して少なくないという。「点字ブロックが設置されるようになって、ホームは視覚障害者が歩けるところにはなったものの、今でも『綱渡り』のようなもの。基本的に『ホームは落ちるところ』だと考えて、まず危ない箇所を調査してほしい」と山城氏は訴える。

年間の転落事故件数を見れば、ホーム上の安全は視覚障害者だけではなく、幅広く鉄道利用者全体に関わる問題であることは疑いない。まずは転落の多発している駅や場所を洗い出し、危険箇所を把握することが重要だろう。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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