トヨタ経営陣が目指す「真の競争力」 株主総会で語った、トップの思い

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――他社のクルマで好きなのは?

豊田社長 自分にはトヨタの社長の顔と、レーサー“モリゾウ”という2つの顔がある。モリゾウは他社のクルマでもいいクルマならほめる。でもそのクルマが何かについては、トヨタの社長としては企業秘密。この場での回答は控えさせてください。

「設備投資をせず、生産性を10倍にするのが競争力」

――トヨタの持続的成長に向けた「真の競争力」とは何か。具体的に説明してほしい。

新美篤志副社長 私の課長時代から不良品は20分の1、災害は6分の1に減った。生産面のリードタイムは半分になった。それでも問題は多いと思う。本来は不良品も災害もゼロであるべき。在庫は発生するし、ラインの繁閑もある。変化の多い時代にリードタイムが長いのは問題だ。われわれだけでなく部品メーカーや販売店も含めてカイゼンのネタは多い。現状に満足せず、進んでいくと高みが見えてくる。これが競争力につながる。

豊田社長 世界経済のグローバル化に伴い労働力の安価な場所で作ることで競争力が生まれると勘違いした時代があった。だが、われわれの先人たちは、石油ショックの時代に石油の使用量を減らして乗りきった。むやみに設備投資をせずに生産性を10倍にするのが競争力だ。21世紀の工場は全部ロボットが生産すると夢見ていた。だが、現在も工場では多くの人々が働いている。人間の知恵は無限だ。

――現在のトヨタが懸念する事項は?

豊田社長 自然災害をはじめ、予期しないリスクに絶えず直面している。予想をたてて備えるだけでは不十分だ。ある事象が起きたら現地現物を確認し優先順位をつけていく。トップの責任は決めることと責任をとること。3秒で決断することもあるが、その3秒のために残りの24時間がある。

――株主総会招集通知に“社会に役に立つ”“前進する”と書いてあるが、どのように前進するのか。

豊田社長 トヨタは昨年、75周年を迎えた。歴代のトヨタの社長は自分のやっていることが花開くのは自分の世代ではなく、次の世代だと思ってやっている。現役の苦労は将来に花開く。そこにロマンを感じる。私はいずれトヨタを去るがトヨタは残り続ける。これからの25年は次の100年に向けて、トヨタがトヨタであり続けるための努力をしていきたい。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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