脆弱さ露呈、高まる国債の「テールリスク」
市場動向を読む(債券・金利)

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ただ、こう言ってしまうと、日銀の2%インフレ目標を織り込んで日本国債の金利が本格的な上昇局面に入ったのではないかという議論にもつながりがちであるが、そのように結論付けてしまうのは時期尚早である。上述のように、5月以降のグローバルな長期金利の方向性は、そもそも、米債金利を中心に総じて上昇方向であり、日本国債の金利の上昇も基本的にはその「トレンド」に沿ったものだと言える。

そういったグローバルな動きがトリガーとなって、「トレンド」を上回る大きな「振れ」が生じた結果、5月の日本国債の金利の上昇が突出したものになったのである。その「振れ」の部分を捉えて、日本国債の金利の「トレンド」とみなしてしまうのはやや乱暴な議論である。

ボラティリティの高さだけなのか

では、5月に顕在化した日本国債の「振れ」をどう解釈すべきだろうか。

これを単純に「ボラティリティ」(変動性)と言ってしまうのも、必ずしも正確な理解ではないだろう。確かに、日本国債市場のボラティリティは4月の金融緩和後にいったん跳ね上がった後、5月以降も基本的には高水準にある。ボラティリティの水準は、リーマン危機が発生した2008年以降で見ると、米国のQE2(量的緩和2)導入の余波でグローバルに長期金利が大きく変動した2010年秋のピーク水準を大きく上回る最高水準に達している。

「ボラティリティ」は金融資産のリスクを測る代表的な指標であり、実際、「ボラティリティ」の上昇はVaR(ヴァリューアットリスク)など金融機関の内部管理上の数値を変化させることで、金融資産保有の資本配賦上での制約を高める。一般論として、ある資産クラスにおいてリスク量が増大すれば、期待リターンが高まらないかぎり、投資妙味が低下する。すなわち、リスクプレミアムが求められるようになる。その意味では、4月以降「ボラティリティ」が上昇してしまった分、単純に長期金利の水準に上昇圧力が加わる状況が生じたことは間違いない。

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