静かに加速する中国人採用、その「光と影」 見せかけだけのダイバーシティ?
基本的に、会社のPRにつながらない、しかも有名雑誌や新聞の記事ではなく、書籍の書き下ろしのための取材、というと消極的になる企業は多い。今回はさらに「中国関係」ということで、より慎重になった企業が多かったように私は感じた。
そんな中、取材を受けてくれた企業のひとつが日立製作所。同社では90年代から留学生の採用を、12年度からは国籍を限定しないグローバル人材の採用を開始。明確な数値目標を決め、採用の10%を外国人にしているという。
同社の社員は単体で約3万5000人。毎年600人を採用しており、そのうち約60人が外国人だ。文系、理系ともに採用しており、海外からの採用者もいる。大手部品メーカー、アルプス電気は16年、総合職として入社した93人のうち、12人が外国人(うち8人が中国人)だった。こちらも10%に近い割合だ。
日本企業が中国人を採用するワケ
昨今、留学生や海外の大学から中国人など外国人を採用する企業の目的は、ダイバーシティ(多様性)と優秀な人材の確保という、主に2点だ。
日立では「バックボーン(背景)が違う人がいれば、それぞれ考え方が異なる。“新しい血液”を社内に取り入れることによって、これまでと違う角度でのモノの見方、人脈、手法が生まれる。そこでさまざまなアイデアが生まれるので、会社にとっても、一緒に働く日本人社員にとっても、よい影響、相乗効果をもたらしてくれます」(同社人事教育総務センタ)と話していたが、まさしくそれがダイバーシティのメリットだといえるだろう。
丁寧に取材に答えてくれた日立は、きっと真剣に中国人の活用に挑んでいるのだろう。しかし、取材を断ってきた企業などの対応を見て、私はだんだんと「そんな企業ばかりではない」と違和感を覚えるようになっていった。
冒頭の調査結果にも現れているように、日立などを含め、多くの企業は中国人など外国人の採用には積極的だ。しかし、取材申し込みの過程で、いくつかの企業は、「日本人が採れないから中国人を採ったわけではないんですよ。うちを受験する日本人は優秀なのですが、ダイバーシティのためにわざわざ中国人を採用しているんです」という、“言い訳”にも聞こえる声を耳にしたからである。
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