視聴率71%!広島民の尋常ならざるカープ愛 いまさら聞けない「市民球団」の秘密とは?

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今期の年俸は球界最高の6億円。黒田なかりせば、カープの年俸水準は今も最下位を争う水準になる。年俸上位100位には、黒田投手のほかベテラン捕手の石原慶幸選手、それに助っ人外国人のジョンソン選手、エルドレッド選手、ルナ選手の4人しか入っていない。リーグ優勝に多大な貢献をした菊池涼介選手、丸佳浩選手はともに8500万円で115位。シーズン後半で神懸かり的な活躍を見せ、「神ってる」という流行語を生み出した鈴木誠也選手に至っては、わずか1700万円だ。

カープがカープらしからぬ高額年俸を黒田投手に払えたのは、観客動員数の急増とともに球団の業績が大きく伸びたからこそだろう。「カープ女子」に代表される通り、この3年ほどの間に本拠地のみならず、首都圏でもカープファンが大増殖している。それはホームゲームだけでなく他チームの本拠地で戦うロードでの動員数にも表れている。

球場に来るファンがカープファンだったのか、対戦相手チームのファンだったのかを判別できる統計などもちろん存在しない。ロードではホームチームの動員数が伸びているチームもあるので、ロードの動員数増がそのまま首都圏のカープファン増加の指標になるわけではない。

首都圏でも赤いユニフォームが急増中?

しかし、広島から新幹線なら1時間で行ける甲子園だけでなく、神宮球場、横浜スタジアム、そして巨人のホーム・東京ドームですら明らかに赤いユニホームを着たカープファンが大増殖している。首都圏在住の広島県人が急に増加するはずもなく、明らかに広島県人ではないカープファンが大増殖しているのだ。

広島出身ではないカープファンに、カープの魅力を聞くと、必ず出るのが「応援の楽しさ」。カープファンの応援スタイルは、選手の名前をコールしながら、立ったり座ったりを繰り返すスクワット。球場へ行くと見ず知らずの隣近所の人と盛り上がる。

加えて「特定の大企業に依存しない市民球団であること」や、「高額の年俸で他球団から有名選手を連れてくることなく自前で育成している」ことを挙げる。それが25年もリーグ優勝から遠ざかるという、長い低迷の原因にもなったのだが「日本人のメンタリティにぴったりはまる」のだという。

巨人が一時期、高額の年俸で各球団の主力を根こそぎ入団させながら、出場機会を与えず飼い殺しにした記憶は未だにファンの間では鮮明だ。近年では阪神がそのマネをしているとして、阪神ファンからカープファンに乗り換えるファンもいる。

ファンはカープ流ドケチ経営を支持しており、高額年俸を求めて他球団に移籍した選手は裏切り者扱いだが、カープ一筋で野球人生を全うする選手は英雄視する。

そしてカープファンはひときわ「布教」にも熱心だ。周囲の人にカープの魅力を熱心に説き、球場へ誘い、応援の楽しさを知らしめてとりこむ。

筆者はヤクルトファンだが、カープファンは実に楽しそうだし球団や所属選手にはシンパシーを感じる。カープファンに誘われる機会があれば、一度是非、その誘いに乗ってカープの魅力を体験してみることをお勧めしたい。

伊藤 歩 金融ジャーナリスト

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いとう・あゆみ / Ayumi Ito

1962年神奈川県生まれ。ノンバンク、外資系銀行、信用調査機関を経て独立。主要執筆分野は法律と会計だが、球団経営、興行の視点からプロ野球の記事も執筆。著書は『ドケチな広島、クレバーな日ハム、どこまでも特殊な巨人 球団経営がわかればプロ野球がわかる』(星海社新書)、『TOB阻止完全対策マニュアル』(ZAITEN Books)、『優良中古マンション 不都合な真実』(東洋経済新報社)『最新 弁護士業界大研究』(産学社)など。

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