「すみません」という日本語が示す3つの意味 その基盤は「自責の念」にある
実は、私たちが使う日本語の「すみません」には、複数の意味があるのです。私たちはシチュエーションによって、その複数の意味を自然と使い分けているのです。
このことをきちんと踏まえずに、日本語の感覚で英語を話してしまうと、会話中に「I am sorry.」を連発することになってしまい、西洋人になぜそんなに会話中に謝るのか不思議がられることでしょう。これは、まさに私が渡米したばかりの頃の姿です(笑)。
「すみません」を三つの英語にすると
それでは、私たちは「すみません」という言葉を、どのように使い分けているのか整理してみたいと思います。
先に結論を言うと、私たちはシチュエーションに応じて「謝罪」「感謝」「依頼」(呼びかけ)という三種類の意味の「すみません」を使い分けています。この三種類の意味を明確にするために、まず「すみません」という言葉の語源を考えてみたいと思います。
「すみません」という言葉を解体すると、「すみ」「ませ」「ん」という三つに分解できます。「すみ」は、動詞「済む」の連用形、「ませ」は丁寧語の助動詞「ます」の未然形、「ん」はこれらを打ち消す助動詞「ぬ」の変化形の語です。
「済む」には「物事が完了する」「仕事が終了する」という意味があります。しかし、「済む」の同源に「澄む」というものがあり、これは「心配や邪念がなく、心がすっきりする」という意味を持つようです。この二つの意味を合わせると、「すみません」は、仕事を終了させることができなかったり、約束事を守れなかったとき、申し訳なくて「自分の気持ちがおさまらない」という「謝罪」の意味になります。これが三種類のうちの第一の意味です。これは英語で「I am sorry.」と表現しても問題ないように思います。
そして、第二の意味は、「感謝」の意味です。これは、相手から何かを頂いたときや、何かをしていただいたとき、その有り難さに対して申し訳ないことに何もお返しができず、「自分の気持ちがおさまらない」という深い「感謝」の意味になります。これを英語にすると、「Thank you.」となります。
さらに第三の「依頼」(呼びかけ)の意味は、「謝罪」と「感謝」の意味も幾分か含んでいます。よく考えてみると、私たちが相手に何かを依頼するとき、それは相手に何かしらの負担をかけることになるのです。私たちはそれを無意識にも認識し、そこから申し訳ないという「謝罪」と「感謝」の思いが心に生じ、「すみません」という言葉を使うのです。
また、前を歩いている人を呼び止めるときでも、深く考えてみると、その人の行為を中断させ、こちらに振り向かせるという負担をかけていることになります。
ですから、「(邪魔して)すみません」と言って声をかけるのです。これは「Excuse me.」という英語で表現できるでしょう。
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