32歳崖っぷち女子、「婚活デート」でキレた! 東京カレンダー「崖っぷち結婚相談所」<10>
「杏子ちゃん、ごめんごめん~。待った?」
正木は17分遅れで、待合せ場所の神楽坂に到着した。シャワーを浴びて乾かしたばかりと見える髪はフワフワと浮いていて、服装はジーンズとTシャツといった、かなりラフなものだ。
――遅刻したうえに、全然気合いが入ってるようには見えないわ……。
杏子は騒々しい駅前で、マノロブラニクのピンヒールで立ちっぱなしで17分も待ったことに、かなり憤慨していた。
「いえ、大丈夫です……」
しかし、婚活アドバイザーの直人や多くの恋愛本によって、女は安易にキレてはいけないということを学び、杏子は我慢をするという行動を覚えたのだ。
「杏子ちゃん、今日も本当に可愛いね~」
正木は、ニコニコと無邪気な笑顔を杏子に向ける。杏子は、それに応えるように、同じように笑顔を返してやった。


















