コーヒー豆はウイスキー樽で進化を遂げる エンジニアが発見した新しい味わい

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たとえば、スマトラ島産の豆のテイスティングノートには、樹木と大地の匂いに加え、タバコや熟した南国フルーツの香りがかすかに感じられる、と記されている。米国流の頑固なウィスキーである「サンズ・オブ・リバティ」(このウィスキーは、2016年ワールド・ウイスキー・アワード金賞など幾多の賞に輝いた)が醸す甘さが豆の香りを引き立て、忘れられない一杯となる。

次にエチオビア産の豆は、桃やイチゴ、ハチミツやチョコレートを連想させる香りが人気だ。ライ麦ベースのウィスキーを醸造した樽に詰められたことで、少しだけフルーティーさのある甘さを放っている。

3つ目に、ルワンダ産の豆はラム酒の樽に貯蔵されることで、シロップや焦がした砂糖、焼けたトーストのような香りを醸し出す。

エンジニア2人が創業

創業者のジョン・スペイツ(左)と、ジェイソン・マラニョン(右)(Courtesy of Cooper’s Cask Coffe)

クーパーズ・カスクは2015年、コンピューター会社のエンジニアだったマラニョンとスペイツが共同で設立した。彼らはもともと、コーヒーにこだわりがあったわけではなかった。マラニョンは「最初は事務所の『変な匂いのする』のコーヒーだって飲んでいたよ。クリームと砂糖を入れて、口に合うようにしていたけど」と語る。

しかし、その時、彼は自己流のコーヒーを作ってみよう、とひらめいた。「まず、ストーブの上のフライパンで豆を焙り始めて、煙探知機を反応させた」と振り返る。「そして、ポップコーン製造機を改造してみた。いまでは商業用ロースターを改造したわけだ。エンジニアとして、僕はいつも新しいものを作りたがっていた。クラフトコーヒーも単に、その創造性の延長だよ」。

2人は当時の仕事をこなしながら、クーパーズ・カスクの設立構想を練り続けた。マラニョンは「(小規模醸造所で職人が作る)クラフトビールがビールの大メーカーを打ち負かしたような革命を、コーヒーでも成し遂げたいと思った」という。

彼らはコーヒーを飲む人々も勇気づける。「ちょっとだけ、幸せに逃げてみよう」という呪文がパッケージに記されている。コーヒーをただの朝の燃料としか考えていない人も、一部にはいるかもしれない。だが、コーヒーを飲んで1日の始まりや午後の仕切り直しを彩ろうというクーパーズ・カスク流の考え方は、大胆かつ官能的で、真の目覚めを誘うものだ。

(敬称略)

執筆: Emily Contois (Zester Daily/Reuters)

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