消費者被害に救済法、集団訴訟の期待と不安 消費者が企業を訴えやすくなる法案、審議始まる

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ユニークな2段階式

新制度は「日本版クラスアクション」と呼ばれることがあるが、米国のクラスアクションとは似て非なるものだ。米国では被害者であれば、誰でも訴えることができ、実際の損害額を大きく超える「懲罰的賠償」が可能だ。これに対し、日本の新制度は裁判の原告や損害賠償の範囲をかなり限定している。また日本の制度がユニークなのは、2段階の裁判手続きを経て、消費者の被害分を企業から取り戻そうとしている点だ。

図のように、国が認定した特定の消費者団体が企業を相手に訴訟を起こし、勝訴すれば、次の2段階目に進む。消費者はこの段階で初めて訴訟に参加し、自分の被害を申し出て、被害額を返してもらう。

手続きを2段階にしたのは、消費者が裁判に入ってくる時期をできるだけ遅くし、消費者の敗訴リスクを低くするためだ。消費者は団体が勝訴した訴訟のみ参加すればよく、いわば、「消費者側に下駄を履かせて訴えやすく」(消費者庁)している。

では、新制度はどんな被害に対する救済がイメージされているのか。

消費者庁は、ゴルフ会員権の預かり金や大学の学納金の返還、07年に経営破綻した英会話学校NOVAのような、語学学校の受講契約を解約した際の清算などの事例を想定している。しかし、有価証券報告書の虚偽記載や個人情報の流出、製品事故や食中毒で生命・身体や家財道具などが焼失したことによる損害などは対象外で、消費者被害なら何でも訴訟の対象となるわけではない。

賠償金が膨らむと懸念する経済界からの批判に応えた工夫も凝らしている。

まず、1段階目で提訴できる団体を消費者庁が絞り込み、しっかり監督を行う。消費者集団訴訟に似た制度として、07年から消費者団体による差し止め請求訴訟が可能になったが、同訴訟を行うことのできる、国の認定した団体は全国に11団体しか存在しない。新制度ではこれらの団体をさらに絞り込む。

また、訴訟の対象になるケースは最低でも数十人程度の「そうとう多数の消費者に生じた財産的被害」に限定し、被害がそれなりに広がったケース以外は、この制度による救済の対象としないことになっている。

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