「106万円の壁」が映すパート主婦世帯の難問 まだ序の口、2020年問題にも今から備えよ

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

パート主婦が勤務先で社会保険に加入すると、厚生年金に加入することで将来に受け取る老齢年金の額が上乗せされる。健康保険では、病気やケガで仕事を休んだときには傷病手当金が、出産で休んだときには出産手当金を受け取ることができ、夫の扶養に入っている場合よりも保障が手厚くなる。

夫が自営業である妻、あるいはシングルマザーなどで、自身が国民年金・国民健康保険に加入している人にとっては、勤務先で社会保険に加入すれば、保険料の自己負担は半分で済むメリットもある。

しかし、パート主婦の生の声を聞き、各報道をみるにつけ、これらのメリットはさほど注目されていない印象を受ける。「106万円の壁」に直面するパート主婦の多くは、もっぱら手取りの減少を気にしているのだ。

では、手取りはいったいどれくらい減るのか? たとえば年収129万円の人は、現在は所得税・住民税が天引きされた手取りが約124万円だが、社会保険に加入することでこれが約107万円に下がってしまう。約17万円の手取り減は、確かに家計にとって大きな痛手だ。

パート主婦は年収の壁など気にしていない?

「106万円の壁」により社会保険の適用対象になる場合、今まで通り働くと社会保険料分、手取り収入が純減してしまう。これを避けるには、労働時間を増やして年収を上げ、社会保険加入前と同水準の手取りを目指すか、年収を106万円未満に下げるかのどちらかを迫られる。

前者の場合、先ほどと同じ手取り年収124万円を目指すなら、額面年収にして約152万円が必要だ。つまり、現在よりも額面年収23万円分、月にして約2万円分を多く稼がねばならない。時給1000円で1日5時間勤務なら、月に4日分以上増やす必要がある。

月に4日のプラスならできるだろうと思うかもしれない。しかし、パート主婦が労働時間を増やすのはそれほど楽ではないようだ。厚生労働省のパートタイム労働者総合実態調査(平成23年)によると、夫の扶養に入れる年収130万円未満や、配偶者自身の所得税がかからず、夫の所得税・住民税において配偶者控除を使える103万円以下などに就業を調整しているパート主婦(※パート労働者のうち配偶者がいる女性)の割合は21%に過ぎない。これに対して72%は就業調整をしておらず、このうち38.9%の人はその理由を「必要ない」からと回答している。

これは、できうる限り働いた結果が年収130万円未満や103万円以下におさまっており、わざわざ収入を抑える必要がないだけとも考えられる。

実際にパートをしている主婦の声を聴いても、家庭との両立の難しさから、現状以上に働くのは厳しい人が少なくない。いくら年金受給などでメリットがあっても、社会保険料を負担すること、ましてそれをカバーするために労働時間を増やす選択は、決して簡単ではないのだ。

しかしながら、パート主婦が106万円の壁を避けて年収を下げたとしても、それで万事解決とはいかない。税の面では、配偶者控除の見直しが検討されており、早ければ2018年1月から施行予定だからだ。これは妻の年収が103万円以下なら夫の所得税・住民税の課税対象から38万円を所得控除できるのだが、廃止されると、たとえば年収500万円の世帯なら7.1万円の税負担増だ。(※妻と16歳未満の子供の家庭の場合。社会保険料、その他細かい控除は考慮せずに計算)

妻の年収が106万~130万円であれば、そもそも現状でも配偶者控除は使えないが、配偶者の所得に応じた金額を段階的に夫の所得から控除できる配偶者特別控除を適用できる。ただ、詳細は決まっていないものの、配偶者特別控除についても見直しの検討がされるようだ。つまり、社会保険の負担のみならず税の負担が増す可能性もある。

これまで年収130万円ギリギリにしてきたパート主婦世帯にとっては、「106万円の壁」と配偶者控除の廃止は、年収を抑えることによる負担回避を挟み撃ちするようなものでもある。家計への負担増を軽減するために「夫婦控除」の創設も検討されているが、これは妻が年収を下げるよりも上げる方が有利になる方向だ。

次ページ働き方や家庭とのかかわり方を考え直す時期に
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事