腐敗が明白でも「プーチン王朝」は揺るがない

ロシア独特の事情が、在位20年を可能にした

筆者はベオグラードで開かれたロシアのリベラル派の会合で、中立系世論調査機関レバダセンターのレフ・グドコフ所長に話を聞いた。ロシア人の生活水準が急激に悪化してもプーチンの支持率が80%超から落ちない理由として、グドコフは、他国では有効な批判がプーチンには通用しない点を挙げた。ロシアを守り世界的に偉大な存在にしたイヴァン雷帝やピョートル大帝、そしてスターリンと同列の扱いを受けているというのだ。

グドコフは「国民はプーチンが構造的な汚職に手を染めている可能性を否定はしないが、その功績に比べれば重要な問題ではないと考えている」と指摘。ロシア人はプーチンが生活水準を改善してくれたと思っており、現在は中産階級となった人々は「自身の尊厳が傷つけられたと感じない限り、抗議はしない」と語った。

政治工学センター(モスクワ)のアレクセイ・マカルキン副所長もグドコフ同様、こうした状況は当面変わらないと見ている。「現存する言論の自由は、正しいことを言う自由に限られている。何かが間違っていると言うことはできないのだ」。

プーチンが2018年の選挙で大統領4選を果たせば、メドベージェフ大統領時代に首相だった時期も含めて20年あまり、権力の座にあり続けることになる。現在の国民にとってプーチンは、最も長く権力を保ち続けた独裁者であり、そのカルチャーやプロパガンダ、帝国主義的な衝動などは、空前絶後のものなのだ。

国民の意識は水面下で変化している

ロシア人は、欧州での経済停滞や不安定なユーロ、若年層の高い失業率は民主主義の産物だと教えられてきた。だが、ロシアほど厳しく、民主主義が目指す市民社会の育成や言論・報道の自由が抑圧されてきた国はない。

社会学者のエラ・パネヤクがベオグラードで語ったところでは、ロシア国民の意識と行動は水面下で急速に変化している。慈善活動への参加を拡大し、互いにもっとオープンになっている。セックスに関しても開放的な議論が進んだ結果、避妊薬の使用が増えて出生率が低下し、性的虐待についても公の場で議論されるようになってきている。

社会への変化にもっとオープンな世代が、遅かれ早かれ、帝政時代の貴族に似た生活を送るために国家の資源を使うような古い人間たちが押し付けたルールを拒絶することを、われわれは望まねばならない。

(文中敬称略)

著者のジョン・ロイド氏はオックスフォード大学にあるロイターのジャーナリズム研究所の共同設立者。このコラムは同氏の個人的見解に基づいている。
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