世界の高速列車のトレンドに発生した"異変" 鉄道見本市「イノトランス」速報レポート

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トルコで営業運行開始前の車両を展示するという点では確かに“新しい”といえる。しかし、ヴェラロシリーズは以前から営業運転をしており、その意味では目新しさは感じられない。

9月14日、ベルリンに姿を見せたICE4。イノトランスには出展されない(提供:シーメンス)

一方で、シーメンスとボンバルディアはドイツ鉄道と共同で高速鉄道車両ICE4を開発中だ。最高時速は250キロメートルにすぎないが、ドイツ鉄道の従来の高速鉄道車両よりも軽量化が進んでいる。省エネ性能にも優れ、欧州の主要電化方式すべてに対応している。

ドイツでは高速鉄道と在来線の軌道幅が同じなので、既存の高速車両ICE1、ICE2だけでなく、在来線特急車両の置き換えとしての役割を担う。つまり、ICE4はドイツ国内の高速車両、国際高速車両、在来線車両という3つの役割を果たす。今年12月の営業運転開始が予定されており、将来的にはドイツ鉄道の長距離鉄道の売り上げの7割を担うことが期待されている。

ICE4は9月14日にベルリン中央駅でその姿を見せた。イノトランス会場とベルリン中央駅とは目と鼻の先ほどしか離れていないが、残念ながらイノトランスへの出展は見送られた。イノトランス開幕に先立って行われた記者会見で、ドイツ鉄道産業連盟のベン・ムービズ・マネージング・ディレクターは、ICE4について「最新型で長所が多い」と絶賛していただけに、その姿を会場で披露しなかったのはもったいない気もする。

アルストムは工場を閉鎖

アルストムは高速鉄道車両の展示を今回も見合わせた。一方で、この時期に合わせたかのようなタイミングで、米国ボストン-ワシントンDC間を走る高速鉄道車両の置き換え計画を受注したと8月26日に発表した。さらにアルストムは、フランス国鉄と共同でTGVの次世代型車両を開発すると9月7日に発表している。この次世代車両は製造費やランニングコストをそれぞれ20%削減し、エネルギー消費も25%抑えるという。

新たな高速鉄道プロジェクトを2つも発表したが、アルストムの業績には元気がない。2018年にフランス東部のベルフォール工場で機関車やTGVの動力車製造を打ち切るという厳しいニュースも飛び込んできた。従業員は他の工場に配転し、人員削減は行なわないもようだが、同社の苦境が浮き彫りになったといえる。

代わって注目を集めるのが、スイスの中堅車両メーカー・シュタッドラー。近年業績を順調に伸ばし、2015年度の売上高は22億ユーロ(約2500億円)。日本の鉄道大手・川崎重工業の鉄道事業の売上高を大きく上回る。

シュタッドラーが出展した「EC250」。明日の本公開に向けに最後の磨きをかける(記者撮影)

そのシュタッドラーが出展するのが、高速鉄道車両「EC250」である。最高時速は250キロメートル。2017年にスイス国鉄に納入され、2019年に営業運行開始予定である。スイスに加えドイツやイタリアにも乗り入れ可能な国際仕様となっている。

今年6月に開通した世界最長の鉄道トンネル「ゴッタルドベーストンネル」を走り抜ける高速鉄道車両ということで、現地では大きな話題となっている。実際、イノトランスの屋外展示会場では、EC250は前回の目玉車両だった「フレッチェロッサ1000」が展示されたのと同じ位置にでんと座る。その意味では、EC250が今回のイノトランスの最大の目玉という位置づけなのだろう。そして、アルストムの代わりにシュタッドラーが高速鉄道車両の出展を行う。そこに世界の鉄道車両産業の栄枯盛衰を見て取れる。

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