傷心の欧州、「英EU離脱」を乗り越えられるか 9月16日のEU首脳会議で再び「決起」

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別のEU高官はこれらの措置により、英離脱決定の後に強まっていた反EU運動の攻勢を「欧州が食い止めた」と評している。

英離脱問題は、会議の焦点にはならないにしても、27カ国の首脳が不法移民、暴力的な軍事行動、グローバル経済における資本の自由な移動という3つの課題をめぐる政策に合意する上で、起点とされている。この3つは欧州の人々に懸念を持たせ続け、外国人嫌悪や保護主義を政治面で勢いづかせている。

指導者らはEUを発足させたローマ条約の締結60周年を記念して来年3月にローマで開催される首脳会議までに、こうした政策をもっと確固たるものにしたいと望んでいる。

ただし、主要議題である経済問題ひとつを取っても、成長促進のためにユーロ圏各国の政府がどこまで費用を投じるかについては、南と北、右派と左派、さらにはドイツとフランスとの間にすら溝がある。

難民危機をめぐっては、受け入れに積極的なドイツのメルケル首相と、難民を締め出そうとしているハンガリーのオルバン首相や開催国スロバキアのフィツォ首相ら東欧の指導者との間で、意見が対立している。

EUが国別の難民受け入れ枠設定に動いたことは東欧諸国の反発を招いた。だが、EU・トルコ合意により国境管理が強化されて難民流入が減ったことから、事態は沈静化してきた。ブラチスラバで各国首脳が、欧州の新たな国境と沿岸の警備を強化することで折り合うのは可能だ。

イメージ改善も重要

トゥスク大統領にとって移民と安全保障に続く第3の議題は、グローバリゼーションにおける「バランス」の回復だ。米国とカナダの自由貿易協定に反対する保護主義者の声にどう対処するかも話し合われるだろう。

しかし、欧州では合意するだけでなく、バランスを取ることも難しいものだ。EUの指導者らは、専門領域にいったん深入りすれば議論になってしまうことを熟知している。

ブラチスラバでの合言葉は、ものごとをシンプルかつあいまいに保とう、ということだ。皆がEU維持を優先することで合意している。東欧の無遠慮な国家主義者たちでさえ、彼らの有権者がEUからの補助金を好むことを知っている。

議論を回避すると、合意できることが減るのもまた事実だ。ただ現状においては、ユンケル氏の前任者であるバローゾ前欧州委員長が米ゴールドマン・サックスの幹部に就任することが強く批判されていることが示すように、第一の懸案は彼らのイメージを良くすることなのだ。

トゥスク大統領は先週、「ブラチスラバでは、欧州の政治エリートが現実とはかけ離れていないことが示される必要がある」と述べている。


(記者: Alastair Macdonald 編集: Pravin Char)

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