新型iPhoneが想定以上に「様変わり」するワケ 9月8日の発表会の注目点を一気に予習

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iPhoneの値付けは明快で分かりやすい。サイズが大きなスマートフォンは100ドル高く、保存容量が大きくなるごとにやはり100ドル上がる。iPhone 6s 16GBモデルが649ドルであれば、画面サイズが大きく、容量が2段階大きいiPhone 6s Plus 128GBモデルは300ドル高い949ドルになる。

画面が大きく、より容量が大きなiPhoneへの人気の高まりは、アップルにとって「販売平均価格の上昇」というメリットをもたらす。すなわち、少ない販売台数で、これまでと同じもしくはそれ以上の売り上げを得ることができるので、なるべく画面が大きいものを売りたいはずだ。

このことは、アップルのみならずハイエンドスマートフォンが世界的に苦戦している現在の状況において、最も有効な売り上げ増加のための施策といえる。

アップルはすでに、iPad Proの投入によって、2016年第3四半期決算で、iPadの「販売台数減、売上高増」(いずれも前年同期比)を実現した経緯がある。同様の戦略をiPhoneやMacにも仕掛けていくことは、アップルブランドを高止まりさせつつ、投資家の期待(=株価)に応えることになるだろう。

こうした背景から察するに、筆者のiPhoneに対する注目は、「いかにiPhone 7 Plusが魅力的か」の1点となる。もちろん販売台数は分かりやすい数字だが、減ることが確実視される数字を、アップルはターゲットにしていないだろう。

アップルは「iPhoneの販売台数」から他の数字に注目を移している点も重要だ。「サービス売り上げ」である。

注目集まるFeliCa対応

App StoreやApple Pay、Apple Music、iCloudといった、iPhoneやiPad、Macユーザーが利用するサービスの売り上げは、2016年第3四半期も前年比19%の伸びとなり、季節変動もない。

2016年第4四半期(7月〜9月)は、「ポケモン GO」の爆発的なヒットで、おそらくこのサービスカテゴリは前期と比べても外れ値的な伸びを見せるだろう。問題は、2017年第1四半期決算(10月〜12月)も、この数字を減らさず伸ばし続けられるかどうかだ。

Apple Musicでの映像配信や、App Storeでの購読型課金モデルの柔軟化、そして日本で熱望されているApple PayのFeliCa(Suicaなどの交通・電子マネー)対応による日本市場の組み込みは、サービス部門の成長にとって、重要な要素だ。

加えて、新OSであるiOS 10、macOS Sierra、watchOS 3のより密な連携は、iPhoneユーザーにApple WatchやMacを選んでもらうことを狙っている。そのApple WatchやMacについても、新製品によるテコ入れを行うべきタイミングであり、特にMacについては、筆者も熱望している。

アップルのイベントは、米国太平洋夏時間9月7日午前10時から、サンフランシスコで開催される。アップルイベントとしては3度目の利用となるビル・グラハム・シビック・オーディトリウムがステージだ。

なお、今回のイベントも、iPhoneやiPad、Apple TV、Mac、Windows PCなどでライブ配信される予定だ。 筆者も現地から、Twitter @taromatsumura で中継しつつ、東洋経済オンラインでも速報記事をお届けする。世界に最も大きな影響を与えている企業の戦略がどのようなものになるのか、ぜひ注目してほしい。
 

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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